
欧州中央銀行(ECB)は9月12日の理事会で、①利下げ(中銀預金金利のマイナス幅を0.1ポイント拡大するマイナス金利深掘り)、②月額200億ユーロ(約2兆4000億円)で11月から量的緩和(QE)を再開する、③将来の金融政策運営にあらかじめコミットするフォワードガイダンスの強化(インフレ見通しが2%近くというECBの目標に確実に近づくまで現行ないしそれ以下の水準に政策金利を維持すると約束)、④マイナス金利の副作用を軽減するための施策(超過準備への「階層構造」導入)、⑤貸出条件付き長期資金供給オペ(TLTRO)の条件緩和という、包括的な金融緩和策を決定した。
この決定にはドイツ、フランス、オランダなど出身の、理事会メンバー全体の約3分の1が反対に回ったと報じられている。任期満了を控えるドラギ総裁が相当強引に緩和強化を決定した形である。
だが、最近出てきているユーロ圏の景気指標は、下振れリスクの増大を明確に示しており、ドラギ総裁には追い風である。たとえば、10月3日にIHSマークイットが発表した9月のユーロ圏総合購買担当者景気指数(PMI)改定値は50.1(前月比マイナス1.8ポイント)で、好不況の分岐点である50すれすれになった。
9月に決まった緩和策を公の場で批判したECB理事会メンバーの1人であるクノット・オランダ中銀総裁が最近述べた内容が興味深い。ポイントは2点ある。
「低金利は半永久的な現象」
まず、クノット総裁は9月23日付のオランダ紙インタビューで、ECBの決定は、正確には低金利が一時的な性格のものではなく、むしろ「半永久的な現象(a quasi-permanent phenomenon)」になりつつあることを示していると述べた。
強化されたフォワードガイダンスは、インフレ見通しが2%近くという目標に確実に近づくまで現行ないしそれ以下の水準に政策金利を維持するとしているので、そうした水準に物価が上昇する見通しが立たないのなら、現行水準ないしそれ以下の短期金利は「半永久的」とも言える。
クノット総裁らタカ派のECB理事会メンバーは、財政規律の緩みにつながりかねないQE再開に反対する一方で、マイナス金利深掘りを含む低金利策には寛容である。
とはいえ、低金利が永遠に続きかねないというのは都合の悪い話である。クノット総裁は9月23日のオランダ議会財政委員会で、ECBの物価目標(物価安定の定義)の見直しに言及。現在ECBは「2%に近いが2%を下回る⽔準」を中長期的に目指すことになっており、「幅が広いインフレ目標の設定」を検討することが理にかなう可能性があると指摘。また、「『中長期的』とは何を指しているのか議論を深めると同時に、どの程度の正確さで目標の達成を目指すべきなのか討議する必要がある」とした(ロイター)。
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