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ドラギECB総裁はドイツに財政政策を求めた(写真:AP/アフロ)

 「財政政策が主要な手段になる必要があると、見解が一致した」

 「財政政策が責任を果たすべき時期に来ている」

 「景気の見通しが弱体化し、顕著な下向きリスクが根強い中、財政的な余裕がある国の政府は、時宜を得て効果的に対応する必要がある」……。

財政政策求めるドラギECB総裁

 ECB(欧州中央銀行)は、現時点で投入可能なメニューをほぼ全てそろえた「全部入り」的な包括的金融緩和策を、タカ派の反対を押し切って強引に決定した。理事会が終了した後の9月12日の記者会見で、ドラギECB総裁は、ドイツやオランダなど財政収支に余裕がある国に対して、財政政策を活用した景気刺激策を実行するよう求める上記のような発言を繰り返した。

 10月末に任期満了を迎えるドラギ総裁は、「弾」をあえて撃ち尽くすことによって、通貨統合参加各国政府の側にボールを手渡そうとした感も漂う。金融緩和の「出尽くし感」が市場に漂うことは、承知の上だったのかもしれない。

 ECB理事会メンバーからはほかにも似た発言がみられる。デコス・スペイン中央銀行総裁が9月16日、「ユーロ圏レベルで財政能力を集約すればマクロ経済面の安定に資する」「このような場合、金融政策は現時点で見込まれるような過大な負担にはならないだろう」と述べた。

ドイツは沈黙、批判

 だが、ドラギECB総裁からの財政出動要請に対するドイツの反応は、「沈黙や批判だった」(9月13日、米ウォール・ストリート・ジャーナル)。一種の外圧が加わると、ドイツ政府・与党の姿勢は自国の国民感情への配慮から、かえってかたくななものになる恐れがあるようにも思う。

 ドイツの実質GDP(国内総生産)は4~6月期に、輸出低迷を主因に3四半期ぶりの前期比マイナス成長を記録。7~9月期もマイナスになる可能性が少なからずあり、そうなると米国流に言えば「リセッション」(2四半期連続のマイナス成長)ということになる。ただし、4~6月期は前期比マイナス0.1%で、1~3月期の同プラス0.4%の一部が打ち消されたにすぎず、深いマイナス成長ではない(前年同期比は0.0%)。

 独財務省は9月13日に公表した月報で、「現在のところ、より大幅な景気減速、ないしは著しいリセッション(景気後退)入りは予想されていない。ただ、経済指標は景気が改善に転じる兆候も示唆していない」とした。深いリセッション入りが濃厚になってくるなど、ドイツの政府・与党が危機感を強めざるを得ない状況にならない限り、この国の財政政策が景気刺激を主目的にして、大きな金額で発動されることはないだろう。