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日韓の対立が深刻化している。写真は文在寅(ムン・ジェイン)大統領(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

 米中の貿易戦争は、トランプ大統領と習近平国家主席双方の政治的な都合もあって、長期化・深刻化しつつある。マーケットは、焦りから迷走気味のトランプ大統領の発言やツイートに一喜一憂しながら揺れ動いているわけだが、市場関係者の間では、こうした材料の出方に、そろそろ食傷気味の感も漂う。そうした中、市場は、東アジアの他の政治問題にもかなりの関心を抱いている。

子分同士の争いが激しくなるばかり

 その1つは、日本と韓国の対立の深刻化である。軍事同盟の「親分」である米国が本格的な仲介には乗り出してこない中、「子分」同士の対立が激しくなってしまっている。

 日本は7月4日の韓国向け半導体材料輸出管理強化措置発動に続いて、8月2日には韓国を「ホワイト国(優遇対象国)」から除外することを閣議決定した。これに対し韓国は8月23日、日韓防衛当局間で軍事機密のやり取りを可能にしてきた軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を延長せず破棄すると日本に通告した(失効は11月23日午前零時)。報道によれば、このところ積み重なってきた韓国政府の日本に対する不信感に加え、文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領が側近のスキャンダルから国民の目をそらす必要があったことが、GSOMIAを破棄する決定につながったとみられている。

 日本が韓国向け輸出管理を強化した3日後である8月5日に文大統領が青瓦台(大統領府)で開かれた会議で述べた内容は、驚くべきものだった。

 韓国・聯合ニュースによるとそこでは、「日本は決してわれわれの経済の飛躍を防ぐことはできない。むしろ経済強国に向かうためのわれわれの意志を高める刺激剤になると思う」「日本の経済がわれわれの経済に比べて優位にあるのは経済規模や内需市場で、南北の経済協力で平和経済を実現すれば、一気に追いつくことができる」「平和経済こそ世界のどの国も持つことができないわれわれだけの未来という確信を持って南北が共に努力していく際、非核化と朝鮮半島の平和という土台の上で共同繁栄を実現できる」といった発言があった。

実現性には大きな疑問符

 「日本の非理性的な決定を『脱日本』の契機にするとともに、日本の経済を超える一つのカードとして朝鮮半島の平和を通じた『朝鮮半島平和経済』を示し、日本を超えたい考えを重ねて強調したものとみられる」と聯合ニュースは解説。日本では、NHKが「自らが最優先課題に位置づける北朝鮮との経済協力を絡める形で国を挙げた協力を呼びかけました」と報道。共同通信はよりダイレクトに、「北朝鮮との共闘で日本に対抗したいとの意向を示した形だ」という説明を配信記事に含めた。

 文大統領の上記の発言は、日本との対立激化を自らの政治的求心力を高めるテコにする狙いと、南北の関係改善という最優先課題とを無理に組み合わせた、時間的感覚が伴っていない政治的メッセージにすぎず、実現性には大きな疑問符が付く。

 とはいえ、文大統領による「北朝鮮>日本」と言わんばかりのメッセージが韓国の国民の間に徐々に浸透していき、そのことが結果的に東アジアの安全保障秩序を不安定化させてしまうリスクの存在は、深刻にとらえるべきだろう。