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 韓国でも、近い将来の金融緩和観測が、7月半ばにかけてにわかに強まった。1~3月期の実質GDPは改定値で下方修正されて前期比▲0.4%(前年同期比+1.7%)。4~6月期も半導体の輸出が低迷するなどしており、政府は今年の経済見通しを引き下げた。韓国銀行が5月31日に開催した政策決定会合(金融通貨委員会)では政策金利の1.75%据え置きが決まったが、政策委員7人のうち2人が利下げは必要との認識を示し、うち1人が利下げに票を投じた。

 さらに、6月12日には同行の李柱烈(イ・ジュヨル)総裁が「経済状況の変化に応じて適切に対応していく」と言明し、利下げによる景気刺激の可能性を示唆。そして、日本が韓国向けの半導体原料の輸出規制を強化したことで、韓国経済を下押しする要因が1つ増えた。

 7月18日の会合では、政策金利である基準金利(ベースレート)を0.25ポイント引き下げて1.5%にすることを決定した。筆者の予想通り、韓国銀行は機動的に動いてきた。韓国の利下げは16年6月以来のことである<図1>。

図1:日本・韓国・台湾の政策金利
注:日銀については、量的緩和期(01年3月~06年3月)はゼロ金利とみなし、包括緩和期(10年10月~13年4月)の翌日物金利誘導レンジ0~0.1%程度は0.1%とみなし、量的・質的金融緩和期(13年4月~16年2月)も同様とした。マイナス金利付き量的・質的金融緩和期(16年2月~9月)、長短金利操作付き量的・質的金融緩和期(16年9月~)は、日銀当座預金政策金利残高に適用される▲0.1%とみなしている。
(出所)日銀、韓国銀行、台湾中銀

 ちなみに、筆者は以前より、日本・韓国・台湾の(短期)政策金利の推移とその合計値をフォローしている。日本と台湾は12年以降に利上げしていないのに対し、韓国は17年と18年に各1回利上げしており、利下げに向けた「のりしろ」があったとも言える。韓国の利下げにより、合計値は2.775%に低下した(日本・日銀当座預金政策金利残高適用金利▲0.1%+韓国・基準金利1.5%+台湾・公定歩合1.375%)<図2>。

図2:日本・韓国・台湾の政策金利合計値
(出所)日銀、韓国銀行、台湾中銀資料から筆者作成

 では、アジアの経済に悪影響を及ぼしている「米中貿易戦争」は、これからどう展開するのだろうか。

 「一時休戦」をはさみつつ、安全保障面での対立を軸にした長期にわたる貿易戦争になる可能性が高いと筆者はみているわけだが、少なくとも2020年11月に米国で大統領選挙が行われてトランプ再選の成否が明らかになるまでは、米中の厳しい対立が続くだろう。

 トランプ大統領は7月16日、ホワイトハウスで記者団に対し、中国からの輸入品ほぼすべてに追加関税を拡大する「制裁第4弾」発動もあり得るとの見方を示し、「中国は米農産物を購入することになっている。実行するかどうか見てみよう」と発言。6月29日の首脳会談からわずか半月で貿易戦争の「一時休戦」合意を破棄することも辞さない構えを示し、中国に歩み寄りを迫った。

 また、「対中協議が決着するまで先は長い」とも述べて、双方の意見対立で交渉が長期化するとの見方を示した(時事通信)。

 そして、中国の習近平国家主席は、2020年の米大統領選におけるトランプ大統領の敗北、バイデン前副大統領のようなトランプ氏よりも中国に対してフレンドリーな民主党候補の勝利を願っていると推測される。

 中国指導部は歴史上のエピソードも引き合いに出しながら、国民に「持久戦」の覚悟を促し、米国との貿易戦争に耐え抜いて、米国の指導者が代わるのを待つ構えであるように見受けられる。そうであるならば、大統領がトランプ氏である間に、自国にとって有利ではない妥協を安易にしてしまう可能性は、かなり小さい。

 トランプ大統領はそうした中国の態度にいら立ちを隠せなくなっており、7月30日にはツイッターに、「私が(次の大統領選でも)勝てば、現在交渉中の内容よりもはるかに厳しいものになるか、もしくは合意なしとなるかだ」「米国はすべてのカードを持っている」と書き込んだ。その後、8⽉1⽇に対中制裁関税「第4弾」を9⽉1⽇に発動すると表明し、「一時休戦」があえなく終わった。10月に建国70周年式典を控える中国の指導部が簡単に米国の要求に屈するとは考えにくい情勢で、事態はますます厳しいものになっている。