超実写版のこの映画は自然界の野生動物に関するドキュメンタリーではないことに注意を喚起し、アフリカのサバンナにおけるライオンの集団生活の実情が説明されていた。子どもの頃から筆者も知っていたことではあるのだが、ライオンの群れを統率するのはメスであり、オスは基本的には群れから離れた存在である。その意味で、この映画の題名が「ライオン・クイーン」だったならば、より正確だったという。

貿易活発化をにらむミャンマー

 女性の地位向上を社会全体で推進していく時代である。「ライオン・キング」のオス優位の非現実的ストーリーに批判が向けられる日が、いずれやってくるのかもしれない。

 東南アジアで、既に先進国と変わらない最先端の映画が楽しめる現実を再確認したところで、話を、直接投資を受け入れるためのインフラ整備の重要性に移したい。というのも筆者が旅先のミャンマーで遭遇した「停電」と、ベトナムのホーチミンシティー(HCMC)で巻き込まれた「大渋滞」に、課題が端的に表れていたからだ。

 米中貿易戦争が長期化する中、生産拠点を中国から他国にシフトする動きが徐々に出てきている。「受け皿」の候補国として名前が挙がることが多いのが、ベトナムそしてミャンマーである。だが、生産拠点に選ばれる上では、安定・充実したインフラが必須である。

 旅行先であるミャンマーの大都市ヤンゴンのホテルで、筆者は地元英字紙ミャンマー・タイムズを手にとってみた。7月25日の1面に大きく掲載された記事が、「ミャンマー、ディープ・シー・ポート(水深が深い港)の建設地を来年決定へ」だった。

 高官によると、ミャンマー政府は来年、同国で初となるディープ・シー・ポートをどこに建設するかを決める。そして、このプロジェクトの一環で、政府は内陸に港を6つ設けるつもりだという。貿易の活発化を意識してのことだろう。

バイクと車の音が絶えないホーチミンシティーの中心街
バイクと車の音が絶えないホーチミンシティーの中心街

 今回の旅行で筆者はベトナム航空を利用し、行きにハノイ、帰りにHCMCに短期間滞在した。20数年ぶりに訪れるベトナムがどう変わったかを確認しておきたかったのも動機の1つである。

 ベトナム戦争が終わる前は北ベトナムだった首都ハノイは、昔に比べれば街がずいぶん明るくなり、栄えている印象を受けた。だが、南の商業都市であるHCMCの繁華街は、さらに段違いのにぎわいぶりだった。そしてバイクと車の多さから、街中の道路はひどい渋滞に陥っていた。ベトナムでは昔からバイクが非常に多く、道路が混んでいるのだが、経済成長に交通網などのインフラ整備の拡充が追い付いていないため、事態はさらに悪化していた。

 スマホ上で配車サービスを活用し、空港から乗ったタクシーの運転手がカーナビ画面を見せてくれたが、縦横の道すべて渋滞の表示だった(ベトナム語の表現を教えてもらったが、忘れてしまった)。

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