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 エルドアン大統領は同国の中央銀行を「全面的に改める」必要性に言及した。一方、トランプ政権で経済政策を統括しているクドロー国家経済会議(NEC)委員長は「われわれはフィリップス曲線に異議を唱えていく」と言明した。失業率とインフレ率が逆相関の関係にあるという伝統的な考え方は、経済の構造変化で当てはまりにくくなっており金融政策運営の基軸にはならないという見方であり、米連邦準備理事会(FRB)理事に指名される予定のクリストファー・ウォラー氏とジュディ・シェルトン氏の2人も同じ意見だという。

 こうしたトルコにおける中央銀行を巡る動きを見ていると、米国で最近起こっていることとの共通点を、筆者としては意識せざるを得ない。

 トランプ大統領は、パウエル議長率いるFRBが昨年12月にかけて利上げを重ねたことや、まだ利下げに動いていないことへの不満を、繰り返し口にしている(当コラム7月9日配信「トランプ『口先介入』急増後にFRBは動く!」ご参照)。

 そうした中で取り沙汰されているのが、パウエルFRB議長の「ヒラ」理事への降格というアイデアである。FRB理事(任期14年)は正当な理由(金融政策を巡る意見の不一致は含まれないと解される)がなければ任期満了前に大統領により解任されないという身分保障規定があるが、FRB議長については法律上、そうした明文規定がない。ホワイトハウス内では法律顧問団による理論武装がすでに終わっているもよう。トランプ大統領は6月下旬に行われたインタビューで、パウエル議長を理事に降格する権限が自分にはあると明言した。

 むろん、トランプ大統領の場合、FRBがこれから予防的・保険的な利下げに動こうとしている中で、無理にパウエル議長を理事に降格させる必要性は、現時点では見当たらない。

FRBの利下げ実現を画策

 また、FRB理事の残る空席2つの補充に際してハト派の人物を指名することを通じて、FRBが利下げにますます動きやすくなるよう、トランプ大統領は画策している。

 いずれにせよ、通貨危機に見舞われたトルコと、基軸通貨ドルを発行している米国で、同じようなことが起こっているのは興味深い。トルコがロシア製ミサイル防衛システム「S400」を配備する問題で、トルコと米国の関係は悪化しているにもかかわらずである。

 時代の流れに沿った変化の兆候なのか、それとも単に特殊事例が2つ重なっただけなのか。筆者は最近、どうやら前者ではないかと考えるようになっている。

 そうした、世界的に新たな「常識」のようなもの、「ニューノーマル」になっていくのかもしれないと筆者が最近考えるようになってきたことは、ほかにもある。もう1つ挙げておくと「財政規律の緩み」と、それにもかかわらず「中央銀行の深い関与があって上昇しない長期金利」の組み合わせである。言い方を変えると、大規模な国債買い入れ継続(あるいはすでに買い入れた国債を市場に売り戻さず保有し続けること)によって、中央銀行が需給の面から長期金利を押し下げることに関与し、結果として財政規律が緩んでいく流れの常態化である。