「金利の敵」を自称するトルコのタイップ・エルドアン大統領(写真:ロイター/アフロ)
「金利の敵」を自称するトルコのタイップ・エルドアン大統領(写真:ロイター/アフロ)
 

 トルコのエルドアン大統領は7月6日、トルコ中央銀行(CBRT)のチェティンカヤ総裁を解任。ウイサル副総裁が後任に任命された。中央銀行の独立性を疑問視させ、通貨の信認を低下させる動きだとして、為替市場でトルコリラが大幅に下落した。

 2018年6月24日の大統領選に勝利して再選されたエルドアン大統領は、議院内閣制から大統領に権限が集中する体制に移行。7月10日に出した大統領令で、CBRTの総裁・副総裁・政策委員は大統領が任命することになった(それまでは議院内閣制の下で内閣が指名)。さらに、これらの役職の任期を従来の5年から4年に短縮した。ただし、これを機にCBRTの総裁が交代したわけではなく、16年4月20日に副総裁から総裁に昇格したチェティンカヤ氏がそのまま在任していた。

「金利は貧しい者をより貧しくする」

 エルドアン大統領は以前から「金利の敵」を自称しており、昨年8月には「金利というものは貧しい者をより貧しくし、豊かな者をより豊かにする搾取の道具であるため、最低限に抑えられるべきだ」と、演説で述べたことがある。トルコが通貨危機に見舞われて、誰が見ても中央銀行による通貨防衛目的の大幅利上げが必要になり、実際にCBRTが大幅利上げに踏み切った場面でも、大統領はあからさまに利下げを要求し続けていた。その後、CBRTは主要政策金利を今年6月の会合まで、24.0%で高止まらせている。

 今回のチェティンカヤ総裁更迭劇は、こうした金融政策の基本線を巡る対立が原因だと報じられている。政府関係者によると、エルドアン大統領と娘婿のアルバイラク財務相が同総裁に任期満了前の退任を求めたものの、中銀の独立性を盾に拒否されたため、解任に踏み切ったのだという(ロイター通信)。

 また、チェティンカヤ氏はCBRTが積み立てている460億リラ(約8700億円)規模の準備金の政府への移管要求にも抵抗していたとされる(日本経済新聞)。GDP(国内総生産)が2四半期連続でマイナス成長を記録するなど景気が悪化する中で、与党AKP(公正発展党)への不満が強まり、6月のイスタンブール市長選再選挙で与党は大敗。政治的な逆風下、エルドアン政権は大幅利下げで景気を浮揚させようともくろんでいるようである(同)。

 インフレ率が以前よりも落ち着いてきていることを理由に、総裁交代後のCBRTは利下げに動くのではないか。結果的にはエルドアン大統領の強権に屈する形になるのではないか。市場ではそうした観測が流れている。

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