そして、6月に「口先介入」が急増した後の7月下旬にFOMCが利下げを決めれば(そうなる可能性がきわめて高くなっている)、少なくとも外形的には、昨年12月の「口先介入」多発と今年1月のハト派への急な姿勢転換のケースと同様、FRBは結局はトランプ大統領の言うことに従った、という順序になる。

 パウエル議長は6月25日に外交問題評議会で登壇した講演の中で、「FRBは短期的な政治圧力から隔絶している。これはしばしばFRBの『独立』を表す言葉として用いられる」「政策が短期的な政治利害に屈した場合、痛手を負うことを議会は知っているからこそ、このようにFRBを隔離することを選択した。世界中の主要な民主主義国家ではどの中銀も同様の独立性を保持している」と述べた。

 多くのマスコミは、トランプ大統領からの利下げ要求をパウエル議長がけん制した発言だと報じた。だが、必ずしもそうではあるまい。

 大原則として、中央銀行であるFRBは政治から独立している。したがって、大統領が利下げを要請してきたからといって、これに唯々諾々と従う義務や必要性は全くない。

 しかし、だからといって、政治の要請を中央銀行がはねつける姿をなんとかデモンストレートするために余計に利上げするのは望ましくない(実際、政治圧力への反発から強行した昨年12月の追加利上げは結果的に失敗だった感が強い)。また、入手されるデータに基づいて必要と判断される、景気後退を予防するための利下げ、あるいは物価のさらなる下振れリスクに備えた保険的な利下げを、政治が同じ行動を要請しているからという理由から、「やせ我慢」して見送るのも望ましくない。

高まるトランプ再選の可能性

 必要と考える行動を取った上で、その根拠は政治からの強い要請ではなく、中央銀行当局者による公正中立で自主的な判断だと、納得感が十分伴う説明をするのがベストである。絶えずしっかりそう説明していく責任が、FRBには間違いなくある。

 政治圧力が高まった直後にFRBが動くという前後関係になるよう、事前にじっくり見定めた上でトランプ大統領が「口先介入」の回数を「調整」しているとまでは考えにくいものの、こうした一風変わった独自の「トランプ・ウォッチ」を今後も継続していく価値はある。マーケットエコノミストの経験がかなり長くなった筆者は、そう考えている。

 このコラムは、筆者のカウントでは今回が第300回である。従来の常識を覆し続けるトランプ氏が、この節目の回でも主役になった。次は何が起こるのだろうかという興味や好奇心、それから不安をかきたてられる、今までいなかったタイプのこの政治家が2020年の大統領選でも勝利する可能性が、現時点ではかなり高くなっている。

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