現金で日本人のタンスがパンパン!(写真=PIXTA)
現金で日本人のタンスがパンパン!(写真=PIXTA)

 過去最長の10連休が日本で始まったばかりの4月27日、お札に関する1つのニュースがヨーロッパから飛び込んできた。ドイツとオーストリアが前日26日で500ユーロ紙幣(1ユーロ=123円換算で6万1500円相当)の印刷を終了したというのである。ユーロ圏で流通する紙幣の発行主体であるECB(欧州中央銀行)は2016年5月の理事会の時点で500ユーロ紙幣の廃止を決めており、欧州通貨統合に参加している国々は次々とこの紙幣の印刷を取りやめ、最後まで残っていたドイツなど2カ国もついに終了した。

 ユーロ圏が最高額紙幣の製造・発行を取りやめたのは、国際テロ組織やさまざまな犯罪に絡むお金の流れを遮断しようという狙いからである。高額紙幣はマネーロンダリング(資金洗浄)に利用されやすいという見方がある。

 それでもなお、ユーロ圏には200ユーロ札がある(1ユーロ=123円換算で2万4600円相当)。米ドル紙幣の最高額は100ドル(1ドル=108円換算で1万800円)、日本銀行券では1万円なので、次は200ユーロ紙幣の発行を続けることの是非が論議の対象になるかもしれない。

 なお、アングラ経済の規模がかなり大きいとみられているイタリアでは、連立与党の一角である右派政党「同盟」党首のサルビーニ副首相が6月11日のテレビ番組で、イタリアの貸金庫に保管されている資産は数千億ユーロ規模にのぼるとの助言を受けたことを明らかにした上で、それらは「実質的に隠し資金」であり、貸金庫が税務当局から所得や資産を隠す手段になっているため、課税を検討することを示唆した。貸金庫にある資産を自主申告した場合は15%程度の低い税率を適用するのだという。

 一方、ヨーロッパ諸国の中でも富裕層のマネーが伝統的に集まりやすいスイスには、1千スイスフラン(1スイスフラン=110円換算で11万円相当)という超高額額面の紙幣があり、現在でもしっかり流通している。

キャッシュレスについていけない高齢層

 日本では4月9日、主要額面(1万円・5千円・千円)の紙幣を2004年以来20年ぶりに改刷することが麻生太郎財務相から発表されて、大きな話題になった。キャッシュレス決済を促進する狙いから1万円札はこの際廃止すべきだという意見も一部で出ている。だが、現金選好が根強い日本の実情に鑑みると、そうした意見には明らかに無理がある。

 特に高齢層には、いわゆるIT(情報技術)リテラシーが低いままの人々が多く、1万円札を廃止しようとすると、強い反対意見が出されるだろう。キャッシュレス化が着実に進んでいくとすれば、次に出てくる渋沢栄一の1万円札が最後になるのではないかという声も出ている。だが、そうだろうか。筆者自身はQRコードなどキャッシュレス決済をそれなりに活用しているのだが、同年代でもそうした流れについていけていない人は少なくない。

次ページ タンス預金があぶり出される?