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 日本経済新聞(電子版)は5月14日、「新潟市内のタクシー値上げ、賛否両論で見送り」と題した記事を配信した。以下が記事の主要部分である。

 「新潟市内のタクシー運賃の引き上げを巡り、事業者の賛否が割れている。国土交通省はこのほど、市中心部の運賃改定手続きを行わないと表明。5割の事業者から改定要請があったが、規定(7割)に達せず、11年ぶりの改定は見送りになった。人手不足や利用者減などを背景に、新潟県内の他地区や近隣県では運賃改定が相次いでいる。新潟市内の事業者にとっては厳しい事業環境が続きそうだ」

 「改定を要請した事業者の1社は『タクシー運転手の労働環境を改善するためにも値上げは必要』と訴える。利用者減が進む一方で、運転手は賃金が低く、深夜業務も多い。同社は運転手の約3割が65歳以上で、業界でも運転手の高齢化は深刻だ。A地区では12年以降、5社が廃業しており、同社は『今は各社とも我慢比べの状態』と苦境を打ち明ける」

 「一方、改定を要請しなかった事業者からは『今は値上げのタイミングではない』との声が上がった。ある事業者は『タクシーはバスや鉄道に比べ料金が高い。値上げすれば客が減るのは目に見えている』と指摘する。別の事業者は『10月の消費増税と運賃改定が重なれば、利用者のタクシー離れは一段と加速する』と危惧する」

 「北陸信越運輸局によると、新潟県内のタクシー輸送人員は17年までの10年間で35%減少した。営業収入も3割減った。消費者の節約志向などに加え、新潟市内では中心部の衰退もタクシー離れにつながっている。『以前は(歓楽街の)古町からタクシーチケットで遠方まで帰る人も多かったが、今はすっかり減った』(ある運転手)という」(引用終わり)

処方箋ないまま令和に突入

 地方を先導役にして人口減・少子高齢化が日本で着実に進行して需要が減っていく中で、地方圏のじわじわと進む衰退がこのままでは避けられなくなっている。その一方で、新潟県内の運転手の平均年収は17年が287万円であり、県内の男性労働者の平均年収(447万円)の6割強にとどまるため、待遇の改善が急務であるという。

 そこで、大手1社が運賃引き上げを要請し(小型車・初乗り1.3キロまで590円を1.1キロまで590円に変更)、11社が追随したものの、値上げすれば売り上げがますます減るのではと危惧する同業者が少なからずあり、値上げ要請は通らなかったわけである。

 人口動態を背景とする需要面の長期縮小トレンドと、過剰供給温存(競争環境の厳しさ)を特徴とする、物価低迷の根源にある日本の消費者レベルでの需給バランスの緩さを、筆者は「デフレ構造」と呼んでいる。観光客を含む外国人の積極誘致で滞在人口を増やしつつ、業界再編などを通じて供給サイドをスリム化するというのが処方箋になるわけだが、政治が大きく動かないでいるうちに、元号が変わってしまった。