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フィットネス会員は減少傾向(写真:PIXTA)

 10%への消費税率引き上げが10月に予定されているものの、マクロ経済統計を見ると、4月の消費動向調査で消費者態度指数が7カ月連続で低下。3月の毎月勤労統計調査速報では実質賃金が前年同月比マイナス2.5%になり、2015年6月以来のマイナス幅を記録した。後者の悪化については、調査対象企業入れ替えによる1月以降のテクニカルな落ち込みがかなり寄与している可能性が高いのだが、いずれにせよ、足元の個人消費が軟弱な地合いになっていることは疑いない。

 そうした中で、消費者の価格選好や生活防衛意識の強弱を敏感に感じ取ることのできる立場にあるといえるスーパーマーケットの複数の経営者から、10月の消費税率引き上げによる個人消費へのダメージを危惧する声が聞かれるようになっている。

 時事通信は5月13日、「消費増税は大きなダメージ」というタイトルの記事を配信した。首都圏で展開しているスーパーの社長インタビューである。10月の消費増税について、「結構大きなダメージが来るだろう」と警戒。昨年秋ごろから顧客の財布のヒモが一段と固くなっており、増税で消費がさらに冷えることを危惧しているという。

 これより前、4月1日には日本経済新聞が、「小売り現場の景況感は? 消費変調 長引く恐れ」と題した、首都圏と関西圏に展開している別のスーパーの社長インタビューを掲載した。記事中には、「(商況は)よくない。昨年12月あたりから急速に悪くなっている」「低価格な商品だけをいろいろなお店で買っている消費者が目立つ」「飲食料品は軽減税率の対象でもあり、前回よりも引き上げ幅が低い(14年は3%、今回は2%)から影響は軽微だと思っていた。ところが最近の消費の変調で見方を変えた。増税後の買い控えは長引くのではないか。国の財政事情などを考えれば消費増税は致し方ないが、このタイミングは良くない」といった発言があった。

 消費の「前線」とも言えるスーパーで変調が感知されたタイミングについては「昨年秋ごろ」「昨年12月あたり」と、見方がやや分かれたが、景気ウォッチャー調査の業種別DI(原数値)で「スーパー」の現状判断を見ると、月ごとの振れはあるものの、このところ確かに水準が切り下がっている<図1>。

■図1:景気ウォッチャー調査 業種別DI「スーパー」 現状判断・先行き判断
(出所)内閣府

フィットネス支出は最後まで残りやすいが……

 なお、東海のスーパーの景気ウオッチャーからは「ガソリンの価格高騰が予見されるので、消費者にも買い控えがありそうである」とのコメントが、4月調査で寄せられた。米国のように「車社会」の色彩が濃い東海のようなエリアでは、消費動向を見ていく上で、こうした点にも目配りが必要になる。

 5月15日には経済産業省から、3月の特定サービス産業動態統計調査速報が発表された。この統計でカバーされている業種は、対事業所サービスが9、対個人サービスが10と多いのだが、景気動向を探るための身近なインディケーターとして筆者が以前からウオッチしているのは、対個人サービスに含まれる「フィットネスクラブ」である。

 フィットネスクラブへの支出は、カテゴリーとしては選択的支出に含まれるわけだが、日本に高齢化社会が到来するなか、健康志向が着実に高まっているため、懐具合や先行き不安などから消費マインドが慎重化して支出が絞り込まれる際にも、最後まで残りやすい項目である。

 また、テーマパークのように(普通は)支出が一過性ではなく、健康維持・体力増進のため継続性が求められる。したがって、フィットネスクラブ向けの支出まで絞り込まれてくると、個人消費悪化の警告シグナルが点灯したと考えられる。

 3月は、フィットネスクラブの売上高合計が283億2100万円、前年同月比マイナス0.3%になった。18年7月以来のマイナスである。時系列で見ると、このところ伸びが弱まっていることがわかる<図2>。この売上高合計の減少は、調査企業の当該業務を営む事業所数が増えている(同+5.9%)中でのものなので、調査対象を固定して前年同月比を計算すれば、マイナス幅はより大きなものになる可能性が高い。

■図2:特定サービス産業動態統計調査 「フィットネスクラブ」 売上高合計
(出所)経済産業省

 また、利用者合計(フィットネスクラブ利用者とスクール利用者の合計)は前年同月比+0.8%だが、フィットネスクラブの個人会員の利用者に限ると同マイナス0.5%である。

 これとは別に会員数合計も公表資料には掲載されており、フィットネスクラブの個人会員は前年同月比マイナス0.7%。18年12月から4カ月連続でマイナスに沈んでいる。

 複数のスーパー経営者が18年秋ごろ以降の個人消費変調を指摘したことは、すでに述べた通りである。フィットネスクラブの数字からも、それとやや重なる時期からの消費の変調が見て取れる。

 最後に、こうした消費の変調よりも次元が高い話として、「日本のデフレ構造の重さ」の縮図とも言えそうなエピソードを紹介したい。