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ニュージーランドが世界の金融政策をリードする?(写真:ロイター/アフロ)

 米国のパウエルFRB(連邦準備理事会)議長が2019年1月、利上げに慎重で必要なら利下げも辞さない「ハト派」へと急きょくら替えした後、ハト寄りの政策運営姿勢への切り替えが、他の先進国の中央銀行でも目立っている。

 ここでは3月下旬以降の事例を3つ、実際に利下げに踏み切ったニュージーランドを中心にみておきたい。

(1)ニュージーランド準備銀行(RBNZ)

 ニュージーランド準備銀行(RBNZ)は3月27日、政策金利であるオフィシャルキャッシュレート(OCR)を過去最低の1.75%に据え置くとともに、景気見通しの下振れリスクが増したことを理由に掲げて、次の政策変更は利下げになる可能性が高いとの見解を表明した。この姿勢転換は市場にとって、大きなサプライズになった。なぜなら、それまでは21年序盤の利上げが示唆されていたからである。

世界で初めてインフレ目標を採用

 オアRBNZ総裁は4月16日にロイター通信が配信したインタビューの中で、緩和バイアス(金融緩和方向への傾斜)は継続中だが、入手した経済指標次第だとの認識を示すとともに、ハト派への転換はグローバルな経済状況が背景にあると説明した。

 翌17日に発表された1~3月期ニュージーランド消費者物価指数が事前の予想から下振れて前期比+0.1%・前年同期比+1.5%にとどまると、早期利下げ観測が市場で一段と広がった。

 そして、RBNZは5月8日に開催した金融政策委員会(MPC)で、OCRを0.25ポイント引き下げて1.5%にすることを決定した<図1>。主要先進国の中央銀行が相次いでハト派に傾斜する中で、実際に利下げをする国がついに出てきた。

■図1:オーストラリアとニュージーランドの政策金利
(出所)RBA、RBNZ

 RBNZは1989年に世界で初めてインフレ目標を採用した中央銀行なのだが、2018年3月下旬からはFRBやお隣のオーストラリア準備銀行(RBA)と同様に、「物価安定」と「最大雇用」という二重の責務を負っている。

 ニュージーランドでは、中央銀行の改革がさらに進行。法改正により、政策金利の決定方式が、RBNZ総裁単独によるものから、合議制であるMPC方式に変わった。19年4月1日に正式指名されたMPCのメンバー構成は、RBNZプロパーが4人・外部委員が3人となっている。

 RBNZの利下げは16年11月以来のこと。かつては高金利通貨の代表格だったニュージーランドドル(外国為替市場ではキウィと呼ばれている)だが、1.5%という新たな政策金利の水準は、もはや低金利の部類に属する。

 声明文は、グローバルな経済見通しにまつわる不確実性、移民の純流入減少による人口増加ペースの鈍化、いくつかの地域における住宅価格の軟調継続、雇用は持続可能な最大水準近辺だが伸びは落ち着く見通しで19年はキャパシティー面の圧力がやや和らぐとみられること、結果としてインフレ圧力はほんのわずかしか高まらないと見込まれること、などに言及した。

 声明文に付随して公表された会議記録(Record of Meeting)によると、今回もOCRを据え置いた上で引き下げ方向にコミットする案と、利下げして金利見通しをよりバランスのとれたものにする案の2つを討議した末、後者とすることでコンセンサスが得られた。さらに、会議記録には以下の記述も見いだされた。

 「成長見通しに関連する、カギとなるダウンサイドリスクは、グローバルな経済成長、特にニュージーランドの最大の貿易相手である中国とオーストラリアにおける、想定よりも大幅な減速である」

 「いくつかの指標はグローバルな成長がここ数カ月に改善していることを示しており、グローバルな成長の回復加速があり得る。しかしながら、MPCは総じて、回復の加速よりも減速の継続の方を、より懸念している」

 経済のグローバル化が進んできた中で、中国・オーストラリアなど他国の景気減速を、RBNZが強く警戒していることがわかる。