「見聞きしたことはあるが、よく知らない」と「見聞きしたことがない」の合計を筆者は毎回計算しており、3月は73.4%だった。16年6月調査の74.4%などには届かなかったものの、過去4番目に高い数字である<図1>。「物価安定の目標」2%の認知度はきわめて低いままであり、その達成時期は全く見えてきていない。

「経済的繁栄」は低迷したまま……

 内閣府は4月5日付で、「社会意識に関する世論調査」の2019年の調査結果(調査実施期間:1月24日~2月10日)を発表した。国が向かっている方向の良しあしなど社会全般にわたる日本人の意識が調査の対象になっており、参考になる。設問「あなたは、日本の国や国民について、誇りに思うことはどんなことですか。この中からいくつでもあげてください。(複数回答)」への回答の分布を見ておきたい<図2>。

■図2:社会意識に関する世論調査 「日本の誇り」
■図2:社会意識に関する世論調査 「日本の誇り」
注1:調査が行われなかった年(90年、99年、01年、03年)は、線形補間でつなげている。
注2:選択肢「国民の人情味や義理がたさ」は、89年以前は2つに分かれていたが、図表では合算している。
注3:17年の調査から対象年齢を18歳以上に拡大している。
(出所)内閣府
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 最も多くの回答を集めたのが「美しい自然」(55.8%)で、7年ぶりに首位に返り咲いた。僅差で第2位が「治安のよさ」(54.5%)。第3位が「すぐれた文化や芸術」(49.6%)。以下、「長い歴史と伝統」(46.2%)、「国民の勤勉さ、才能」(38.3%)、「国民の人情味や義理がたさ」(33.6%)、「自由で平和な社会」(25.3%)、「高い科学技術の水準」(22.3%)、「高い教育水準」(20.0%)、「社会の安定」(17.9%)、「経済的繁栄」(11.5%)、「国民としてのまとまり」(8.5%)、「その他」(0.1%)、「ない、わからない」(2.2%)の順である。

 グラフからわかる通り、「経済的繁栄」という選択肢は、「アベノミクス」が続けられた中でも低迷したままだった。国民の意識の上では、日本経済は「再生」していないと言えるだろう。

 上位にランクされている「美しい自然」「治安のよさ」「すぐれた文化や芸術」「長い歴史と伝統」は、訪日外国人観光客の増加をうけたインバウンド消費の隆盛に貢献してきた点などで経済的メリットがあると考えられるものの、基本的には経済と直接の関係がない分野である。

 平成の日本は、生産年齢人口が減少に転じて人口減・少子高齢化が進行するステージに移行する中で、経済の強さを世界に誇るのが難しくなり、それ以外の分野に「誇り」を見いださざるを得なくなったのではないか。筆者はそのように受け止めている。

薄れる日本株の魅力

 日本と米国の主要株価指数の「位置関係」を示しているTS倍率が、低下基調で推移している。TOPIX(東証株価指数)をS&P500種で割り算して出てくるこの指標は、足元で0.56倍程度で推移中。4月8日の終値はTOPIXが1620.14、S&P500種が年初来高値を更新する2895.77である。

 TS倍率は小数点第4位までとると0.5595倍になり、わずかな幅ではあるが0.56倍を下回った。これは、安倍氏が首相に再登板する少し前、2012年12月12日以来の水準である<図3>。TS倍率は、「アベノミクス」の下で最も低い水準へと沈んでいるわけで、米国株と比べた場合の日本株の魅力の低下が示されている。

■図3:TS倍率(TOPIX/S&P500)
■図3:TS倍率(TOPIX/S&P500)
(出所)JPX、S&P資料より筆者作成
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 安倍首相は訪米中の2013年9月25日にニューヨーク証券取引所でスピーチした際、“Buy my Abenomics(アベノミクスは買いだ)”と述べて日本株への投資を促した。その頃は海外投資家による日本株買いが活発で、いわゆる「アベノミクス相場」の下での彼らの累積買越幅は15年には25兆円規模まで膨らんだ。けれども、2018年以降は右肩下がりとなっており、今年3月には5兆円を一時的に下回る週があった<図4>。

■図4:対内証券投資(非居住者による取得・処分) 株式・投資ファンド持ち分 週次データのネット(取得-処分)累積額
■図4:対内証券投資(非居住者による取得・処分) 株式・投資ファンド持ち分 週次データのネット(取得-処分)累積額
注:スタートは「アベノミクス相場」が開始された12年11月14日を含む11月11~17日の週
(出所)財務省資料より筆者作成
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