間もなく平成から令和へ……(写真:長田洋平/アフロ)
間もなく平成から令和へ……(写真:長田洋平/アフロ)

 4月5日から8日にかけて、終わろうとしている平成という一つの時代、あるいは「アベノミクス」がもたらしているものについて考えを巡らせる材料になる、いくつかの動きがあった。今回はそれらをご紹介したい。

認知度が低いままの「物価目標2%」

 米国の通信社であるブルームバーグは4月5日午後(日本時間)、「薄れる日銀の存在感、現在の緩和策『見聞きしたことない』が5割超」と題した記事を日本向けに配信した。この記事は、日銀からこの日に発表された3月の生活意識に関するアンケート調査(調査実施期間:2月7日~3月5日)で、①日銀が消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を掲げていること、②上記目標実現のため日銀が積極的な金融緩和を行っていること、③具体的には「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を現在行っていること、以上3点について、全国の満20歳以上の個人に認知度をたずねたうち、③で「見聞きしたことがない」が初の5割超(50.4%)になったことを中心に書かれていた。

 「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」という長い言い回しは、スペースや時間が限られているマスコミ報道には向かない。16年9月に日銀がこの金融政策の枠組みを導入した直後にはこの正式名称で報道されることが多かったものの、費やす字数が少ない「異次元緩和」や「大規模緩和」といった表現が、人々が目にするマスコミ報道では、主に用いられている。

 上記①~③のうちで、筆者が毎回特に注視しているのは、①「物価安定の目標」2%の認知度である。

 リフレ派の考え方に沿って日銀が13年4月の「量的・質的金融緩和」導入時に掲げたロジックは、2%のインフレ目標早期達成への強いコミットメントを前例のない大規模緩和実行で示せば期待インフレ率がシフトアップして現実の物価も2%になるはずだ、というものだった。しかし、2%を目指すという物価目標の存在をそもそも人々がほとんど認知していなければ、日銀のもくろみは水泡に帰することになる。

 3月の調査結果は、「知っている」(26.0%)、「見聞きしたことはあるが、よく知らない」(35.2%)、「見聞きしたことがない」(38.2%)。昨年12月に行われた前回調査と比べると、「知っている」と「見聞きしたことがない」が減少する一方で、「見聞きしたことはあるが、よく知らない」が5.3%ポイント増加した。

■図1:生活意識に関するアンケート調査 「日銀が消費者物価の前年比上昇率2%の『物価安定の目標』を掲げている」ことの認知度
■図1:生活意識に関するアンケート調査 「日銀が消費者物価の前年比上昇率2%の『物価安定の目標』を掲げている」ことの認知度
(出所)日銀
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