しかし、FRB理事へのムーア氏指名については、民間エコノミストを含めてさまざまな方面から「不適格だ」「望ましくない人事だ」といった、強い批判の声が上がっている。

 ムーア氏は「米ジョージ・メイソン大学で経済学修士号を取得しているが、金融政策についての専門知識の持ち主としてではなく、アーサー・ラッファー氏と共に、減税による経済成長促進を提唱するサプライサイド経済学の支持者として知られる」(ブルームバーグ)。

 ブッシュ(子)政権で米大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を務めたことがあり、経済学の教科書執筆でも有名なハーバード大学教授、グレゴリー・マンキュー氏は3月22日のブログに、「この(FRB理事という)重いポストに必要とされる知的な威厳が彼にはない」「ムーア氏は承認されるべきでなく、上院議員は今こそ職責を果たすときだ」と書いた。

コモディティー相場を重視

 実際、ムーア氏の過去の発言を見ると、一般常識とかなり異なる見解の持ち主である上に、発言の内容に首尾一貫性がない。

 昨年12月のインタビューでムーア氏は、経済成長は物価上昇につながるというベーシックな考え方への疑念を示した。その前には「フィリップス曲線」を強くけなす意見も表明。14年には、不況期に景気刺激策をとるというケインジアン的な手法に懐疑的見解を表明したことがある。

 ムーア氏は「強いドル」の信奉者で、FRBの金融政策の大きな目標はドルの価値を支えることであるべきだと主張。ドルが強ければ米国内で雇用や設備投資が増えるはずだという(こうしたドルに対する見方は、興味深いことに、トランプ大統領と正反対である)。

 金融政策運営では、現在は原油・金属・穀物といった商品(コモディティー)相場を重視する考え方をとっており、商品相場が上がれば利上げ、下がれば利下げすべきだと主張している。

 だが、天候要因や投機マネーの流入もあって、商品相場はイレギュラーな動きをすることがある。仮に近年、そうした政策運営をFRBが実施していたなら、米国経済はめちゃめちゃになっていたはずだという指摘もある。

 また、ムーア氏は、現在はハト派の立場をとっているが、15年10月にはFRBに利上げを強く促す主張を展開。14年には共同執筆したペーパーの中で、FRBは資産を売却することにより流動性を吸収してインフレリスクに対応すべきだと主張していた。