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医療費、教育費……出ていくお金は増えていく。(写真=Sakarin Sawasdinaka)

 政府は2019年1月29日の月例経済報告に関する関係閣僚会議で、2012年12月に始まった景気拡張局面は今年1月に戦後最長を更新した可能性が高いという認識を確認した。しかし、3月7日に発表された景気動向指数速報では一致CI(コンポジット・インデックス)の落ち込みがきつく、基調判断はすでに景気が後退している可能性が高いことを示す「下方への局面変化」に下方修正された。

 もっとも、景気動向指数がこの基調判断になっても、その時の景気の落ち込みが条件を満たさず、後退局面とは認定されなかったケースも過去にはあり、2月分以降のデータの蓄積が待たれる状態になっている。

テクニカル論議とは違う世論調査結果

 こうした景気局面に関するテクニカルな論議とはほぼ無縁のまま、いずれにせよ景気回復の実感は乏しいままだという内容になっているのが、マスコミ各社が実施している世論調査の結果である。

◆NHK(2月9~11日実施) ~ 景気回復を「実感している」8%、「実感していない」66%、「どちらともいえない」20%

◆日本経済新聞(2月15~17日実施) ~ 現在の景気回復について「実感している」16%、「実感していない」78%

◆朝日新聞(2月16~17日実施) ~ 景気回復の「実感がある」16%、「実感はない」78%、「その他・答えない」6%

◆共同通信(3月9~10日実施) ~ 景気の回復を「実感している」10.1%、「実感していない」84.5%、「分からない・無回答」5.4%

◆産経新聞・FNN(3月16~17日実施) ~ 景気回復の「実感がある」9.8%、「実感はない」83.7%、「他」6.5%

 景気回復の実感がない人は、共同通信の3月の調査で84.5%に達した。景気動向指数の悪化に関する上記のニュースも影響して「実感はない」派が増えた可能性もある。

 世論調査に回答した人々の多くはなぜ、景気回復の実感を持ち得ないのだろうか。どのような情報をもとにしてそのように回答したかは、人それぞれだろう。判断の基準になった情報の入手源としては、経済に関するマスコミ報道、株価や金利の水準、SNS経由の情報、口コミ情報、自分や身近な人が所属する会社の業績や賃金動向、直感といったものが考えられる。

 いずれにせよ、景気回復の実感が人々の間で伴わない理由を1つだけに限定するのには無理がありそうなので、ここでは筆者が考えているものを3つ、並べておきたい。

(1)企業主導の景気回復であり、しかも労働分配率が低下しているため
 人口減・少子高齢化を背景に、大企業は海外収益への依存度を高めており、内需の将来の拡大にベットした事業展開がしにくくなっている。さらに、配当など株主への還元を重視する米国流の考えが広がった結果、国内従業員への大盤振る舞い的な給与の上積みは期待し難くなった。

 法人企業統計調査で試算すると、労働分配率は長期低落傾向を脱していない。時事通信の集計によると、業績が伸び悩む中でも企業は株主還元に積極的で、19年3月期決算上場企業の配当総額は前期比9%増の11兆6700億円(6年連続で過去最高)になるという。上場企業が過去最高益を更新しても、国内従業員の賃金など待遇面でもたらされるメリットは、限定的なものにとどまっている。