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カナダでは麻薬取引も、GDPに(写真:The New York Times/アフロ)

 考えてみれば当たり前の話なのだが、ニュースの中に実際に出てくると驚かされてしまった。

 カナダ統計局は3月1日、昨年10~12月期の実質国内総生産(GDP)が前期比+0.1%・同年率+0.4%にとどまったと発表した。予想比下振れの急減速で、カナダ銀行による当面の利上げ観測を沈静させたわけだが、それよりも筆者が注目したのは、カナダ政府が、昨年10月17日にG7(主要7カ国)としては初めて合法化した大麻(マリファナ)関連の経済活動が、カナダのGDP統計に完全に組み入れられたことである。ロイター通信が和文記事でもこのニュースを取り上げた。

 カナダ統計局の公表資料によると、同国のGDP統計には、従来は医療用大麻の合法的使用に関連する経済活動のみが記録されていたが、今回からは非医療用(嗜好用)および医療用の大麻の生産・流通・消費に関連する合法・非合法の経済活動がすべて計上・推計されるという。

 昨年10~12月期の家計の大麻関連支出(名目)は年率換算59億加ドル(500億円弱)で、家計支出総額の0.5%を占めた。内訳は非合法が47億加ドル、合法が12億加ドル。アルコール・タバコ・大麻への支出における大麻の比率は11.2%だった。

 カナダのトルドー首相が、ウルグアイに続いて、国として嗜好用の大麻を合法化した狙いは、国が管理することによって不法取引を減らし、犯罪組織を排除することである。「大麻は多くの国と地域で所持や使用が禁じられるが、麻薬のなかでは依存性が低く副作用が軽いとされ、欧米では『ソフトドラッグ』と呼ばれている。依存性が高いコカインや合成麻薬LSDなど『ハードドラッグ』と区別されることが多い」という(日本経済新聞2018年6月21日付)。

「オランダでは、チーズ消費をやや上回る」

 国連で09年に合意した国民経済計算の最新の国際基準「2008年版国民勘定体系(2008SNA)」に対応し、欧州連合(EU)は域内の基準である「ESA2010」を制定。EU加盟各国は14年9月にかけて対応した。その結果、研究開発投資(R&D)資本化などの要因でGDPの規模が膨らんだのだが、オランダの場合、ほかの多くの経済協力開発機構(OECD)諸国と異なり、「国際基準対応要因」よりも「その他統計的要因」の方が大きくなった。

 具体的には、GDPに対する影響は、OECD単純平均が「国際基準対応要因」2.4%(うちR&Dが1.9%)、「その他統計的要因」1.1%、合計3.5%。これに対しオランダは「国際基準対応要因」1.7%(うちR&Dが1.8%)、「その他統計的要因」5.9%、合計7.6%である(内閣府「2008SNAに対応した我が国国民経済計算について<平成23年基準版>」)。

 内閣府の上記文書には「オランダ等のように、『その他統計的要因』の方が、影響が大きい場合もある」としか書かれていないが、このオランダのケースでは「ESA2010」対応の一環で売春・麻薬取引のGDPへの計上額がそれまでより大きくなったことも一因ではないかと考えられる。なお、筆者が学生だった頃から、オランダが大麻などに寛容であることは知られていた。

 ロイター通信は14年6月26日、アムステルダム発で「オランダの売春・麻薬の経済規模、チーズ消費額を上回る」と題した記事を配信した。以下の主要部分を読むと、話の大筋がわかりやすい。

 「オランダの売春や麻薬取引の経済規模は年間25億ユーロで、チーズ消費額をやや上回る規模に達していることが明らかになった」

 「25日にオランダ統計局が欧州連合(EU)の新基準に基づき発表したデータによると、こうした『産業』がGDPに占める割合は0.4%。統計局のスポークスマンは『パンの全消費量をやや下回る水準、あるいはチーズの全消費量をやや上回る水準だ』と説明した」

 「EUの新基準では、GDPの算出項目に売春と麻薬取引による利益を加えるよう求めている」