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 FRB議長は財務長官と定期的に会っているが、大統領と会う機会は少ない。近年では、09年4月にバーナンキ議長(当時)とオバマ大統領(当時)、14年11月と16年4月にイエレン議長(当時)とオバマ大統領(当時)、17年10月にイエレン議長(当時)とトランプ大統領が会談した事例がある。

 昨年12月は、FOMCの開催当日に向けて、トランプ大統領がFRBの追加利上げ路線に対する強い批判を頻繁に表明し、パウエル議長の解任さえ検討したと一部で伝えられた。これに対しパウエル議長は1月4日のパネルディスカッションで、「FRBは、迅速に、柔軟に政策を変更していく用意がある」と言明し、ハト派路線へと明確に舵を切った。

 「パウエルさんは、明らかに緊張していました。何度も手元の資料をめくって、落ち着きません」「この発言の部分だけは、ひと言ずつ、慎重に原稿を読み上げました。おそらく年末年始に用意周到に練り上げたメッセージなのでしょう」とも、後日報じられた(2月1日 NHK)。

 そして、1月30日のFOMC声明文・パウエル議長記者会見は、利上げの休止を強く示唆したほか、バランスシート縮小が早期に終了する可能性にも言及し、米国株を持ち上げた。こうなると、トランプ大統領がFRBを批判し続ける必要は、もはやなくなる。

 この非公式会談に関し、FRBは米東部時間4日午後8時20分に異例の声明を出し、概要をアナウンスした。この会談は「最近の経済情勢と成長・雇用・インフレ見通しを議論するために」開催された。

政治圧力に屈したわけではない

 「パウエル議長の発言内容は先週の(1月FOMC後の)記者会見でのそれと一致していた」「議長は、この先の政策の道のりは入手される経済情報とそれが見通しにどういう意味を持つかに完全に依存するだろうと強調する以外、金融政策の予想を議論しなかった」「FOMCは最大の雇用と物価安定を支援するために金融政策を決めるつもりであり、注意深く客観的で政治色のない分析にのみ基づいて決定するだろうと、パウエル議長は最後に述べた」という。

 この会談は、関係が悪化していた大統領とFRB議長がひとまず和解する機会にはなったと言える。パウエル議長が(大統領からの強いプレッシャーをどこまで意識して動いたのかは本人以外にはわからないが)ハト派に急転回したことに配慮したのか、会談の事実はトランプ大統領のツイートではなく、FRBの声明によって公式に明らかにされた。

 また会談は、1月FOMCの前ではなく、終了した後だった。パウエルFRB議長が、政治圧力に屈したがゆえにハト派に傾斜したわけではないと説明できる前後関係には、一応なっている。

 だが、たとえばFRBが米国の経済情勢への自信を強めて年央以降の利上げ再開を模索し始めたり、何らかの理由で株価が再度急落したりするような場合には、トランプ大統領はパウエル議長への批判を再開したり、今度は早期の利下げ実施を要求したりするかもしれない。したがって、先行きの両者の関係はなお波乱含みと言わざるを得ない。