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ジェローム・パウエルFRB議長(写真:Sipa USA/amanaimages)

 米国の中央銀行であるFRB(連邦準備理事会)の金融政策が、年明けから急変している。昨年12月までは、2019年には2回くらい利上げしそうだという見通しを示していた。だが、今年1月に開催したFOMC(連邦公開市場委員会)では、欧州や中国など海外経済の減速や不安定な金融市場(景気の先行指標である株価の急落)などに鑑み、利上げは休止してしばらく様子を見る姿勢を前面に出すのみならず、次回の政策金利変更は上げ・下げいずれの可能性もあるとした。

 さらに、「量的引き締め」と市場が受け止めて米国株などの急落につながっていたFRBのバランスシート縮小について、当初の想定よりもかなり早いタイミングで、おそらく年内に終了させる方針を前面に出した。利上げに慎重な「ハト派」への急旋回である。

 このようなハト派への急旋回はむろん、株式市場にも債券市場にもポジティブである。2月22日にかけて、ニューヨークダウ工業株30種平均とナスダック総合指数はともに9週連続の上昇。昨年秋から年末年始に水準を大きく切り下げた米国債利回りは、株高によって圧迫されつつも、低い水準のまま上下動している。

米株価急落にひるむ

 FRBはなぜ豹変したのだろうか。ハト派であり金融市場を知悉しているクラリダ氏が副議長に就任し、弁護士出身で金融市場には明るくないパウエル議長に大きな影響を与えたからだという解釈もある。だが、米国株の急落を目の当たりにしてひるんだというのが、最も説得力のある説明だろう。

 しかも、パウエルFRB議長は昨年8月の講演で、「マエストロ」と呼ばれたアラン・グリーンスパン氏によるFRB議長時代の政策運営を称賛していた。グリーンスパン氏は株価が急落した際に「優しく」対応したことで知られている。

 そのほか、パウエルFRB議長はついにトランプ大統領からの執ような利上げ停止要求に屈したのではないかという憶測もある。1月のFOMCの後、トランプ米大統領とパウエルFRB議長が初めて会談した(それまでの経緯は当コラム1月14日配信「トランプ大統領がパウエルFRB議長と会談?」ご参照)。この会談について、ここで概要を見ておきたい。

 2月4日夜、トランプ大統領とパウエルFRB議長は、ホワイトハウス内にある大統領の私的な居住区で、ディナーをともにしながら約1時間半、非公式に会談した。パウエル氏の議長就任後では、大統領との直接会談は初めてである。

 非公式会談にはムニューシン財務長官、クラリダFRB副議長が同席した。この日はパウエル議長の66回目の誕生日で、メインディッシュはステーキ。米国内外の経済問題から大統領とタイガー・ウッズのゴルフまで、話題が広がったという。米政府高官によると「友好的で協調的な」ディナーになった。