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 また、「物価は2%程度毎年上がって当たり前」というインフレ心理醸成を図っている日銀からすれば、名古屋市の動きは望ましくないということになる。ちなみに、携帯電話料金の値下げ要請や教育無償化など、消費者物価を押し下げることになる政策を、政府は最近連発している。物価上昇がまずは最重要課題だというリフレ派的な考え方から、安倍内閣はプラグマティックに距離を置きつつあるように見える。

 ②茨城県が日本三名園の1つである偕楽園を秋から有料化する方針固める(NHK)

 「日本三名園の1つで、梅の名所として知られる水戸市の『偕楽園』について、茨城県はことしの秋から有料化する方針を固めました。偕楽園は、金沢市の兼六園、岡山市の後楽園とともに日本三名園の1つに数えられ、全国有数の梅の名所として毎年およそ100万人が訪れています。これまで入場は無料でしたが、偕楽園を管理する茨城県は、観光地としての魅力をさらに高めるための資金をまかなおうと、ことしの秋から県民以外の人を対象に1人300円ほどを徴収する方針を固めました」

県内客と県外客、どうやって判別するのか?

 「有料化によって年間1億円ほどの料金収入を見込んでいて、この資金で江戸時代の建物を復元した休憩施設を作ったり、周辺の観光施設から訪れやすくなる入場口を新設したりする計画だということです。有料化に向けて、今月から始まる『梅まつり』の期間中には、園内で実証実験を行い、県民と県外から訪れた人を区別する手順などを確認することにしています」

 「茨城県は、民間の調査会社が都道府県の魅力度を調査したランキングで6年連続で最下位となっていて、この取り組みで県を代表する観光施設の改善を図りたいとしています。県は偕楽園を有料化するための条例の改正案を6月の県議会に提案したうえで、ことし11月までには有料化に踏み切りたいとしています」

 筆者は水戸市の小学校に3年生から5年生まで通っていたので、友だちとの遊びや図工の写生などで、偕楽園は何度も訪れた。近年も「梅まつり」に何度か行っている。そうした際には、入場が無料だということに何の疑問も抱かなかった。だが、上記の記事を読んでから調べてみると、日本三名園の他の2つはしっかり有料である(大人の入場料金は金沢の兼六園が310円、岡山の後楽園が400円)。上記のニュースで、偕楽園の入場料として300円程度を検討とあるのは、そうした事例を参考にした結果なのだろう。

 だが、入場料を徴収する対象は県民以外に絞るという点に、筆者は疑問を抱いてしまう。

 最大の問題は、県民とそれ以外をどのように区別するのかという点である。偕楽園の年間約100万人の来園者数のうち、40万人程度が県外からだという。身分証明書の提示が不要の自己申告制なら、チェックは有名無実と化してしまいかねない(いわゆる「ザル」の状態)。逆に、厳格な身分証明書の提示を要求するなら、チェックにかかるマンパワーが膨らみがちになる。

 身分証明書が必要になったという事前の周知徹底が十分なされていなければ、県内から訪れた観光客から「まったく知らなかった」という抗議を受けてしまう恐れもある。県内・県外の区別なく入場料を徴収することにして、今年11月という中途半端なタイミングではなく、来年1月や来年4月といった区切りのよい値上げにすればよいのではないか。

地味なイベントのままでいいのだろうか……

 また、徴収した入場料の使途が果たして茨城県の観光政策という観点から本当に有効なものになるのだろうかという疑問もわいてくる。いわゆる「お役所仕事」では、新しいトレンドやニーズを把握しにくいように思われる。「県を代表する観光施設の改善を図る」というが、日本人の観光客誘致ばかりしていても、その後の展開には人口面からおのずと限りがある。

 率直に言って、偕楽園の「梅まつり」は、お祭りとしてはそのままではかなり地味なイベントである。何とか工夫を凝らして、東京に大挙して集まってくる外国人観光客の一部でも、できればオールシーズンで水戸に呼び寄せることのできる方策はないだろうか。国の施策ですでに成功しているように、外国人(海外の旅行業関係者などを含む)の意見を大いに参考にしつつ、SNS(交流サイト)を経由して独自の魅力を拡散するのが、考え得る有力な方策である。

 入場料の形で手に入れることになる貴重な資金を、茨城県はどのように使おうとするのだろうか。筆者にとっては興味深いウォッチ対象になりそうである。