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ついに入場無料でなくなる偕楽園の左近の桜と好文亭(写真:PIXTA)

 2月12日の日中に流れた2つの報道には、地方自治体による料金設定のあり方について、考えさせられる内容が含まれていた。

 ①名古屋市が市営地下鉄の初乗り運賃を10円値上げすると発表(以下の記事の引用は日本経済新聞電子版から)

 「名古屋市は12日、消費税率が10%に引き上げられる10月1日から市営地下鉄と市営バスの一部料金を値上げすると発表した。地下鉄は大人の初乗り運賃が現行の200円から10円上がる。市バスは運賃を据え置くが、一日乗車券などを値上げする。料金改定は消費税率が8%になった2014年以来」

 「地下鉄の初乗り運賃は1996年4月に180円から200円となり、以降据え置いていた。10月からは3キロ以内の初乗りと、11キロ超は10円値上げ。3キロ超11キロ以内は現行のままとする」

 「地下鉄、市バスともに一日乗車券は大人で20円、子供で10円それぞれ引き上げる。定期券は地下鉄は大学生以上、市バスは通勤定期を上げる」

 「高校生までの地下鉄定期などは消費増税後も据え置くため、市は地下鉄で年間6533万円、バスで同4684万円を負担する。市交通局は『客数の増加や経費削減でまかなう』としている。19日開会の2月市議会定例会に条例改正案を提出する」

消費増税、バス運賃と通学定期は据え置き

 5%から8%に消費税率が引き上げられた際は、官民の鉄道・バス会社の多くが増税分を運賃に転嫁した。名古屋市はその際、市営バスの運賃は値上げする一方で、地下鉄の初乗り運賃は据え置いた。しかし、8%から10%へ消費税率がさらに引き上げられる場合、燃料のコスト増などを一部転嫁しなければ採算面で一段と苦しくなってしまう。今回は、バスの運賃は据え置きつつ、地下鉄は初乗りを含めて値上げすることにしたようである。ただし、通学定期券は高校生までは据え置くなど、市民生活への一定の配慮も示した。 

 この事例の関連で筆者が思い出したのは、大阪市営地下鉄における初乗り運賃値下げの事例である。

 橋下徹市長(当時)の要請を大阪市交通局が受け入れる形で、14年4月の消費税率引き上げと同じタイミングで、初乗り運賃が20円値下げされて180円になった(ただし、それ以外の区間は消費増税分の転嫁が行われて値上げ)。減収見込みが34億円とされた初乗り値下げの財源は、将来の民営化による人件費圧縮など経営合理化で賄う、とされた。

 さらに、17年4月には、3年前の消費増税時に値上げされた、初乗りに続く「2区運賃」が10円値下げされて230円になり、増税前の水準に戻った。減収見込みは20億円である。

 名古屋市のケースは、初乗り運賃などを値下げした大阪市のそれとは異なり、将来の地下鉄民営化を先取りしている(端的に言えば民営化の実現に向けて政治的プレッシャーをかけようとしている)わけではない。また、減収見込み額は、大阪市のケースと単純に比べると、そう大きなものではない。

 国民負担を増やすことになる国の施策に対して、位置関係として国と住民の間に挟まっている地方自治体が、部分的に「クッション」を提供しようとした事例と言えるだろう。もっとも、その効果にはおのずと限りがある。