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共和党内でのトランプ米大統領の政治的求心力にも、陰りが見え始めている。(写真=ロイター/アフロ)

 IMF(国際通貨基金)は1月21日に公表した最新の世界経済見通しで、世界全体の成長率予想を引き下げた。昨年10月に続く2回連続の下方修正である。2017年が前年比+3.8%になった後、18年の実績見込みは同+3.7%。その先の見通しは、19年が同+3.5%(0.2ポイント下方修正)、20年が同+3.6%(0.1ポイント下方修正)である。

 国・地域別で見た場合に最も目立つのは、ユーロ圏の19年の経済成長の見通しが前年比+1.6%にとどまったことである(0.3ポイント下方修正)。最大のエンジンであるドイツが同+1.3%(0.6ポイント下方修正)、「問題児」と言えそうなイタリアが同+0.6%(0.4ポイント下方修正)になったほか、フランスも小幅下方修正された。

 また、「新興市場・発展途上経済」の19年の見通しは前年比+4.5%(0.2ポイント下方修正)。昨年に中央銀行が通貨防衛・インフレ予防を目的とする利上げに動いたロシアやメキシコ、原油価格急落が経済的な打撃になっているサウジアラビアやナイジェリアなどが下方修正された。

「景気後退はまだ近づいていない」

 ラガルドIMF専務理事は、世界経済フォーラムが開催されていたスイス・ダボスでの記者会見で、「景気後退はまだ近づいていない」としつつも、米中貿易摩擦などの問題を抱える中で、世界経済の成長が「急速に減速するリスクが確実に高まっている」と発言。政治家らに対しては「経済に関わる脆弱性に対処しなければならない」と述べて、高水準となっている公的債務の削減など課題解決を急ぐよう促した。

 こうした世界経済全体がスローダウンしていく流れからは、昨年「独り勝ち」と言われることがあった米国の経済も、けっして無縁ではあり得ない。すでに米国の上場企業の四半期決算には、米国外の景気減速の悪影響がじわり及んできている。

 米国の経済・マーケットの関連で、「大統領サイクル(プレジデンシャル・サイクル)」という言葉がある。米国では中間選挙を経た後、次の大統領選挙に向けて政権党が支持率浮揚を狙った政策を打ち出すため、実質GDPの成長率が高まりやすい。また、そうしたことを先読みして、景気の先行指標である株価は中間選挙の後に上昇しやすいという経験則がある。

 1930年から2017年までの実質GDP(前年比)について平均値を調べてみると、大統領の就任1年目の年が+3.3%、2年目の年(中間選挙年)が+2.4%である一方、3年目の年が+3.9%、4年目の年が+3.7%で、任期後半の方が経済成長は加速している<図表1>。

■図表1:「大統領サイクル」で見た場合の米実質GDP(前年比) 平均値(1930~2017年)
(出所)米商務省資料より筆者作成

 また、主要株価指数の1つであるS&P500種について、米調査会社が1896年以降30回の中間選挙年に焦点をあてて集計した結果によると、中間選挙の翌年のS&P500種は平均で14.3%上昇。それ以外の年の平均上昇率である8.4%を大きく上回っており、「中間選挙後の株高」が当てはまるという(18年11月2日 日本経済新聞電子版)。

 だが、トランプ政権の場合にはこの経験則は当てはまりにくいと、筆者はみている。

 その最も大きな理由は、景気悪化局面ではなく好況下で大型減税を実行してしまうという、トランプ大統領による極めてイレギュラーな政策運営である。