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日銀の黒田東彦総裁(写真=ロイター/アフロ)

 金融市場のプロの間では、昨年のドル/円相場については、米国の利上げ継続を主たる根拠にした円安ドル高予想派と、筆者のような円高ドル安予想派が、きっ抗した状態だった。しかし今年は、米国の利上げ局面終了見通しや、数多い「リスクオフ」の材料を根拠に、円高ドル安予想派が明らかに優勢になっている。

 日本時間1月3日早朝、ドル/円は一時104円台後半まで、4円以上という大きな幅で円高ドル安方向へ急速に動いた。商いが非常に薄い時間帯に、AI(人工知能)により自動執行されたアルゴリズム取引や、FX(為替証拠金取引)の損失確定目的のドル売り円買いが入り、動きが増幅された結果だと推測される。米国株や英ポンドで過去に起こった「フラッシュクラッシュ」の新たな事例とも言えるだろう。

 いずれにせよ、日米欧の中央銀行のバランスシート合計額の縮小が起こりつつあり、「カネ余り相場」終焉への恐怖感が漂う中、中国の景気指標悪化や米国の一部連邦政府機関の閉鎖継続といった「リスクオフ」の材料に、市場が敏感に反応する素地がある。

 その後、ドル/円は一時110円台まで値を戻して取引されており、日本経済にとってクリティカルなレベルとみられる100円までは距離がある。

半ば必然的に円高ドル安が進む?

 だが、筆者がずいぶん前から予想している通り、米国の利上げ局面が年内に終わり、先行きの米国の利下げへの転換を市場が相応の確率で織り込むようになると、日米中央銀行の「金融政策のベクトル」に差がなくなり、半ば必然的に円高ドル安が進むことになるだろう。

 ここで、先行き円高が進む場合に市場の一部から出てくることが予想される「日銀が金融緩和をさぼっているから円高ドル安が進んだ」という類の主張にあらかじめ反論しておく意味合いも込めつつ、日本のマネタリーベース(中央銀行が供給する通貨。ベースマネーと呼ばれることもある)の状況を見ておきたい。

 日銀が16年9月に導入を決定した「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の中核は、「イールドカーブ・コントロール」と「オーバーシュート型コミットメント」である。後者は、「マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで」マネタリーベースの拡大方針を継続する、というもの。導入時の日銀の説明によると、「『フォワード・ルッキングな期待形成』を強め」、さらには「『物価安定の目標』の実現に対する人々の信認を高める」狙いがある。