1月3日に招集された新勢力分野(野党民主党が過半数)の米下院では、2人の民主党下院議員がトランプ大統領の弾劾手続きを求める決議案を提出した。こうした決議案に過半数の賛成票が集まれば、トランプ大統領は弾劾訴追され、上院に舞台を移して弾劾裁判が開かれる(弾劾罷免には訴因について3分の2以上の賛成が必要)。民主党のペロシ下院議長は弾劾について、「政治的な理由で目指すべきではないが、排除すべきでもない」と述べた。同議長を含む民主党執行部はモラー特別検察官による捜査の最終報告書を待っており、その内容を見きわめた上で弾劾の是非を判断する模様。一部米メディアは最終報告書が 2月中旬にも司法省に提出されると報じた。

バノン氏「今年はトランプ大統領にとってひどい年になる」

 ここで問題になるのは、最終報告書の全容が議会や一般国民にきちんと公開されるかどうかである。大統領寄りの姿勢であるウィテカー司法長官代行(もしくは上院の承認手続きを経て今後就任するとみられるバー司法長官)を介して、またはトランプ大統領自らが権限ありと主張しつつ、報告書の一部について議会などへの公表を差し止める可能性がある。

 そうした事態を避けたい民主党は、文書提出命令など議会が持っているあらゆる手段を行使するとけん制している。1月上旬には「ロシアゲート」を扱う連邦大陪審の設置期間が延長されたことが分かった。これは見逃せない動きである。「仮に司法長官が報告書の議会提出を認めない場合には大陪審を通じて提出する選択肢がある。ニクソン元大統領を辞任に追い込んだ『ウォーターゲート事件』では、特別検察官が大陪審を通じて報告書を議会に提出した」(1月7日 日本経済新聞)からである。

 トランプ大統領の支持率はおおむね安定している。米有権者が政治面で二極化している中で、コアの支持層が 4 割前後いる状況に変わりはない。だが、弾劾訴追の有無にかかわらず、民主党は下院の司法委員会や情報特別委員会などで大統領を厳しく追及する構えである。

 トランプ政権発足当初からしばらく首席戦略官を務めたスティーブン・バノン氏は1月7日、訪米した自民党の河井克行総裁外交特別補佐と会談。大統領にとって今年は難局が続き「ひどい年になる」という見立てを示した(1月8日 時事通信)。筆者には非常に印象的な一言である。

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