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経済3団体新年祝賀パーティーでスピーチする安倍晋三首相(写真=つのだよしお/アフロ)

 企業トップが自社の社員に対し仕事始めにメッセージを伝える「年頭所感」。報道ベースに載った内容をチェックして考察を加えるのが、筆者が必ず年初にする仕事になっている。

 1999年から今年まで20年ほどの年頭所感に見られたキーワード・中心テーマは、以下の通りである<図1>。

■図1:企業トップ「年頭所感」におけるキーワード・中心テーマ
1999年 (生き残りのためのリストラ)
2000年 (「IT革命」への対応)
01年 「変革」「挑戦」
02年 「改革」「挑戦」「スピード」
03年 「挑戦」
04年 (「攻め」の姿勢)
05年 (「3つのテーマ」に集約 ~ 不断のリストラ、成長事業強化、海外事業拡大)
06年 「価値」
07年 (好業績に安住しない緊張感)
08年 (景気の先行きを警戒)
09年 「原点」「改革」「チャンス」
10年 「リスクをとらないことがリスク」「新しい発想」
11年 「グローバル」「10年先」「ゼロベース」
12年 「グローバル」
13年 「変化」「変革」
14年 「飛躍」(ただし、経済の見方ではアベノミクス期待と先行き警戒が混在)
15年 「グローバル」を強調しつつ、慢心を戒め
16年 さまざまな「変化」への対応
17年 「まさかの時代」への対応
18年 「個の力」「コンプライアンス」
19年 (事業環境の不透明感や大きな変化への対応)
(出所)時事通信など各種報道をもとに筆者作成

 今年の年頭所感は内容のばらつきが顕著だった印象だが、その中で目立ったのが表にある通り、事業環境の不透明感や大きな変化への対応を社員に促すものだった。企業は、内外の景気悪化懸念という短期的な問題と、社会の大きな変化という長期的な変化の双方への対応を迫られている。具体的な年頭所感の事例をいくつかご紹介しておきたい。

国際政治の不透明感・東京五輪・技術進歩……

 「米中の貿易摩擦や英国のEU(欧州連合)離脱など、事業環境の不透明感は増している。起こり得る変化に備え、次の新しい目標に向かって素早く行動を始める心構え、覚悟を一人ひとりが持ってほしい」(機械)

 「2019年は近年まれに見る数多くのイベントが予定されており、これまでにも増してビジネスを取り巻く環境が大きく変化する年となる」(小売)

 「昨年は米中摩擦や米朝首脳会談など世界情勢が大きく動いたが、今後も大転換の時代は続く。諸先輩の功績や歴史に感謝しつつ事業を創出するためには、われわれ自身が変わり続ける必要がある」(商社)

 「さまざまな社会課題が顕在化・複雑化している」(損保)

 「これからの時代は異業種との競合や連携が当たり前になる。時代の変化に乗り遅れることなく、迅速に成長投資を実行していく。AI(人工知能)やロボットが当たり前になる時代では、それらをうまく取り入れることが企業として成長を続ける鍵だ」(建設)

 新年の政治の世界はどうか。今年は統一地方選挙と参議院議員選挙が両方行われる年である上に、安倍晋三首相が「衆参ダブル選挙(衆参同日選挙)」で勝負に出るのではという観測が相当広がっている。

「頭の片隅にもない」安倍首相

 安倍首相は1月7日、時事通信が都内で主催したイベントであいさつした際に、野党が警戒している今夏の衆参ダブル選挙について、「マスコミでダブル選挙をやるのではと言われているが、頭の片隅にもない」「『頭の片隅にもないと言いながら(6年間で)2回総選挙をやっている』との指摘もあるが、今回(頭のどこにも)まったく、どこにもない」と述べた。

 「頭の片隅にもない」という言い回しを、安倍首相はこのところよく用いている。1月4日の年頭にあたっての記者会見では、衆参ダブル選に踏み切る可能性について問われた際、「そういう声が一部にあるということは承知しているが、私自身の頭には片隅にもない」と返答。

 それより前、昨年12月30日に放送されたラジオ日本の番組で安倍首相は、「衆院解散は頭の片隅にもない」と発言。皇位継承・大阪で開催されるG20首脳会議・消費増税といった19年の課題を挙げ、「(これらで)頭がいっぱいだ」とした。