限られる日銀の打つ手

 日銀にとって一番大きな問題は、取り得る政策がとても限られていることです。米国は、金利を下げる余地が小さいといってもまだ2%以上あります。これに対して、日本はマイナス金利を続けており、これ以上の金利の「深掘り」は大変です。マイナス金利を深掘りすると、銀行の収益がさらに悪化する懸念があるからです。

表2●マイナス金利が進む
表2●マイナス金利が進む
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 (表2)をご覧ください。日銀は現在、政策金利である「コールレート、翌日物」をマイナス0.1%から0%の間に誘導しています。数年前からそのような状態が続いています。また、長期金利(10年国債利回り)もマイナス0.2%からプラス0.2%の間に誘導しています。長期金利も、今年に入って以降、ほぼマイナス金利の状態が続いています。これは世界の中央銀行の中で異例の対応です。

 また、日銀当座預金の金利も現在、マイナス金利の状態にあります。3つの段階に区別して、それぞれプラス0.1%、ゼロ、マイナス0.1%としています。日銀当座預金は、銀行が余ったお金を日銀に預けるのに使用するものです。

 こういう状況ですと、地方銀行や信用金庫などはなかなか稼ぐことができません。これらの金融機関は、貸出先があまりなく、預金が増えるばかりの傾向にあります。これを運用しようにも、資金をコール市場に出しても、10年国債で運用しても、そして、日銀当座預金に置いても、なかなか稼ぐことができないわけです。それどころか、運用がマイナスになる可能性も大きい。この状態で日銀がマイナス金利を深掘りすることになれば、銀行の収益はますます厳しくなるのです。

 銀行にとってベストなのは優良な貸出先を見つけ貸し出しを行うことです。しかし、良い貸出先を開拓するのはなかなか難しく、また、見つかったとしても銀行間の貸し出し競争が激しく、思うような金利が取れないのが現状です。

表3●貸出金利は低下する一方
表3●貸出金利は低下する一方
(出所)日銀
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 貸し出しの伸びは、2%台にとどまっています。さらに注目すべきは、銀行の貸出約定金利がどんどん低下し、最近では0.9%を切っている状態にあることです(表3の右列)。この状態では、一部の銀行では、融資を行ってもコストすらカバーできないことになりかねません。

 これらのことを総合すると、マイナス金利の深掘りは、日銀にとって簡単に選べる選択肢ではないわけです。また、例えば、10年国債利回りの誘導ゾーンをマイナス0.3%からプラス0.3%と広げ、実質的なマイナス金利の深掘りをしたとしても、景気に与えるインパクトはそれほど大きくないと考えられます。

 また、すでに忘れられている感がある「異次元緩和」の主力だった量的緩和も、ほぼ限界に達している状況です。

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