日本銀行の黒田東彦総裁(写真:ロイター/アフロ)
日本銀行の黒田東彦総裁(写真:ロイター/アフロ)

 来週の7月29~30日に、日本銀行が金融政策決定会合を開催します。6月に続き、今年5回目の会合です。同会合は、総裁、副総裁を含む9人で構成する日銀の最高意思決定機関。日銀にとって今回の会合は、とても難しい判断を迫られるものになると予想されます。

 その理由は、米国の中央銀行であるFRBが7月30~31日に、日銀の金融政策決定会合にあたるFOMC(連邦公開市場委員会)を開催し、そこで「利下げ」を決定する可能性が高いからです。現状2.25~2.50%の間に誘導している「政策金利」を0.25%引き下げることが予想されています。それを見越すように、短期金利の代表格である米国債3カ月物の利回りはこのところ2%を少し超えた程度で推移しており、市場はすでに利下げを織り込んでいます。

FRBより1日早い日銀の金融政策決定会合

 「政策金利」は中央銀行がゾーンを決めて誘導するもので、米国では、日本と同様、銀行同士が1日だけ資金を貸し借りする際の金利をその誘導対象としています。市場は、この金利が下がると予想しているわけです。

 後で述べるように、打つ手が非常に限られている日銀は、米国が利下げすれば、さらに厳しい状況に陥る可能性があります。また、日銀の金融政策決定会合が、米国のFOMCより1日先に開かれることも、日銀にはとても大変なことです。米国の政策を見極められない状態で自身の政策を決める必要があるわけですから。

表1●長短金利の逆転が起きている
表1●長短金利の逆転が起きている
(出所)米財務省
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 また、米国では、ここ数カ月にわたって長短金利の逆転が起こっており、これが、景気後退の前触れではないかとの懸念を生じさせています。

 いずれにしても、FRBが利下げする可能性が高く、米国時間の7月31日午後2時(日本時間8月1日午前3時)に声明を出す予定です。

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