「純輸出」は明らかに減少している

 「純輸出(輸出-輸入)」を見ましょう。

 中国税関総署の統計によると、2018年通年の貿易黒字額は3517億ドルで、前年比16.2%減となりました 。貿易黒字額の減少は、GDPにマイナス要因として働きます。輸入額が同15.8%増加したものの、輸出額は9.9%増に留まったとのことです。

 さらに直近である2018年12月の貿易統計によると、輸出額は、前年同月比4.4%減の2212億ドル、輸入額は同7.6%減の1641億ドルとなり 、輸出、輸入ともに前年同月の水準を割りました。米中貿易戦争の影響と、景気減速による内需の弱含みが主な要因です。そして、今後も米中貿易摩擦の影響から、結構厳しい状況が予想されます。

 最後に、「政府の支出」を考えます。中国の2018年の歳出は前年比8.7%増の22兆1000億元でした 。さらに中国では、同年に総額1兆3000億元の大規模な減税を実施しています。2019年には、国内経済の減速を見込み、さらなる減税を行う見通しです。つまり、家計、企業の支出の鈍化、貿易黒字額の減少といったGDPを下押しする力を、政府の歳出増加などで補おうという姿勢が鮮明になっています。それだけ、中国経済は厳しいということです。財政出動で、世界第2位の経済大国の経済を支えられるのかは不明です。

日本よりも早く出る中国の統計

 以上の点を考えますと、中国は6.6%成長をしているとはとても思えません。中国経済のそれぞれの要素で起きている「現象」を見ると、鉛筆を舐めている印象が否めません。政策目標を達成できるよう成長率の数字を作っているのではないかと感じます。

 さらに、もう一つ疑念があります。中国が2018年10~12月期、および2018年のGDPを発表したのは、1月21日。約20日間での発表です。これは、統計を発表するタイミングとして早すぎるのではないでしょうか。主要国の中では世界で最も短い期間でなされる発表です。

 日本のGDPの統計は、対象期間が終了した後、1カ月半程度で発表されます。人口が日本の10倍近くあり、国土面積も約25倍に達する中国が、たった21日間で正確なGDPの値を算出できるものでしょうか。

 日本への影響を見極めるためにも、中国経済の状況に注意する必要があります。「6.6%」という数字を鵜呑みにすべきではないでしょう。

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