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「ZOZOARIGATO」のスタートによってブランド撤退が相次いだ

 ところが、ここに来て潮目が変わりつつあります。一体、何が原因なのでしょうか。

 前澤社長の説明によると、自社開発した全身採寸のボディースーツ「ZOZOSUIT」の需要が想定よりも下回り、今期200億円を想定していたPB(プライベートブランド)事業の通期売り上げが30億円にとどまる見込みです。

 ZOZOSUITは発表当初、大きな話題を呼びましたが、製造が遅れたり、精度に問題があるとの指摘が相次いだりして、出鼻をくじかれる形となりました。改善にも時間がかかり、機会損失が生じました。

 もう一つの問題は、2018年12月からスタートした有料会員サービス「ZOZOARIGATOメンバーシップ」の影響です。これは、入会すると商品購入金額が10%割引されるサービスです。割引分はZOZOが負担します。

 ところが、この「ZOZOARIGATO」に対し、一部のブランドが強く反発しました。同じ商品がZOZOTOWNで10%も安く販売されたら、顧客はZOZOに集中し、ブランド価値を毀損する可能性があるからです。新商品を投入しても、すぐに割引されるわけですから、他店舗との間で混乱が生じる恐れもあります。

 その結果、オンワードやミキハウスなど一部のブランドが撤退する騒ぎとなりました。1月31日時点で42ショップが全商品の販売を見送りました。ショップの「ZOZO離れ」が今後、どれだけ進むかが懸念材料になります。

自社株買いと新型ZOZOSUITで株価は急上昇したが……

 ZOZOの決算内容の中で私が興味を持ったのは、「自己資本比率」です。自己資本比率は純資産の大部分を占める「自己資本」を「資産」で割った数字で、会社の中長期的な安定性を示す数字です。2018年3月期には57.7%だったものが、2018年12月期には26.3%まで大幅に落ち込んでいます。下方修正したとは言え、206億円の営業利益が出ているにもかかわらず、なぜ自己資本比率が激減しているのでしょうか。

 答えは、「自社株買い」です。貸借対照表の「純資産の部」を見ると、「自己株式が▲244億円となっています。ZOZOは2018年4月27日に自己株式の取得を発表しました。

 2018年3月期の資本金は13億円、株主資本合計は408億円ありました。これが2018年12月には資本金13億円、株主資本合計は202億円になっています。

 自社株買いをすると、まず、市場から株式を買うため、それだけで株価が上がりやすくなります。また、買い取った自社株は、株式数には算入されないため、一株当たりの利益や配当が増えやすくなるメリットがあります。その分、先に見たように自己資本比率が減りますが、ZOZOの場合、現状の収益力を考えれば、26.3%という数字は安全性に問題のない水準だといえます。

 この時期に自社株買いをした理由は、業績が好調な時期に、さらに株価に勢いをつけるためだったと考えられます。

 その自社株買いの資金は「短期借入金」を増やすことで調達しました。「負債の部」の「短期借入金」に220億円計上しています。

 自社株を買って純資産(自己資本)を減らした上に、負債を増やしたわけですから、ROE(自己資本利益率=純利益÷自己資本)が上昇します。さらに自社株買い発表と同じタイミングで、新型のZOZOSUITを発表。投資家がこれらに反応し、株価が上がったものと思われます。株価は2018年7月にはピークの約5000円に達しました。

設備投資をほとんど必要としない事業

 さらに興味深い点として、設備投資の状況が挙げられます。

 2018年4月~9月期のキャッシュ・フロー計算書をみると、設備投資にあたる「有形固定資産の取得による支出」に8億円計上しています。これは、「減価償却費」の約6億円を超えており、ある程度積極的に投資していると言えます。

 しかし、ZOZOの年間売上高は約1000億円。これを考え合わせると、投資がほとんど必要ないビジネスモデルと言えます(ですから減価償却費も少ないのです)。ネット上のショッピングモールを構築しているだけですから、かなり儲かる事業であることが分かります。

 この事業構造は、非常に興味深いですね。このまま拡大を続けていけば、膨大な利益を稼げるでしょう。投資家たちもそこに魅力を感じ、ZOZO株に飛びついたわけです。

 けれども、現在の株価は低位安定。7月のピークから下落の一途を辿り、現在(2月6日現在)は2000円前後の水準となっています。ブランドが相次いで撤退する中で、ZOZOは再び事業を拡大できるのでしょうか。業績不振のPB事業にテコ入れし、復活を目指すのか。あるいは高収益のこれまでのビジネスモデルを維持しながら拡大を続けるのか。このあたりの見極めに注目です。ここまで見てきたように、もともと超高収益のビジネスモデルだったので、このビジネスモデルにさらに磨きをかけることに期待したいところです。