意外にも「RIZAP」を含む主力事業部門も赤字だった
RIZAPの決算を検証していて、極めて意外だった点がありました。事業ごとの収益をまとめたセグメント情報を見てください。

2017年4月1日から9月30日までの状況を見ると、どの事業も利益を出していました。主力であるパーソナルトレーニングジム「RIZAP」は、「美容・ヘルスケア」に含まれています。
ところが、翌年2018年4月1日から9月30日を見ると、
セグメント損益は、どの事業も赤字になっています。
私は、主力部門だけは利益を上げていると思っていました。あれだけ注目され、芸能人も多数利用しているという話を聞いていましたから。
ところが、実際は「美容・ヘルスケア」も19億円の赤字です。「RIZAP」そのものは黒字かどうかは不明ですが、いずれにしても、主力部門が赤字に陥っているのです*。本業が悪化しているとなると、このまま回復に向かうのかは難しいところです。ただ、痩身に対する需要は大きいでしょうから、回復の可能性がないわけではありません。私の周囲でも、RIZAPに入会した人が結構います。
すぐに経営危機に陥ることはない
では、RIZAPはこのまま経営危機に陥ってしまうのでしょうか。安全性を見ていきましょう。
財務内容を見る限り、すぐさま経営危機に陥ることはないと私は考えています。
企業の安全性を見る上で最も優先すべきは、短期的な安全性を示す「手元流動性」です。企業は流動負債を返済できなくなると倒産します。その返済のためのお金がいくらあるのかを端的に表しているのが「手元流動性=(現預金+流動資産の有価証券)÷月商」です。
19年3月期の「現金及び現金同等物」は572億円。これは月間売上高の3.14カ月分に相当します。手元流動性は、大企業の場合は1カ月分、中堅企業だと1.2カ月分、中小企業の場合は1.7カ月分あれば、まず大丈夫です。RIZAPは3.14カ月分の流動性を保持しているので十分な水準です。
次に、「流動比率=流動資産÷流動負債」を計算しましょう。こちらも短期的な安全性を示す指標です。値は164%。この値は120%を超えていると一般的に安全と判断されます。RIZAPの場合は、こちらも安全水域です。短期的には問題はないと言えます。
ただし、お金の調達方法には注意が必要です。
貸借対照表の「資本の部」をみると、2018年3月末の資本金は14億円、資本剰余金は54億円。これが2018年9月末には、それぞれ192億円、234億円となっています。
資本金が大幅に増えている理由は増資です。キャッシュ・フロー計算書の「財務活動によるキャッシュ・フロー」をみると、「株式の発行による収入」を354億円計上しています。
ただし、利益の蓄積である「利益剰余金」は、18年3月末の213億円が18年9月末には104億円まで減少しています。純損失が出た分、減っているのです。
つまり、増資をして現預金を増やしたわけですが、このまま赤字が続くと厳しい状況に陥る可能性があります。
銀行のスタンスはどうでしょうか。銀行は、融資先が経営危機に陥って危ないと判断した場合、まずは、長期貸付を減らして短期貸付を増やします。RIZAPの長期での有利子負債残高は18年9月末で408億円。3月末から23億円ほどは減少していますが、銀行は今のところ、それほどスタンスを変えていないのではないかという印象を受けます。
もちろん、銀行の姿勢は今後の業績によって大きく変わる可能性があります。19年3月期第3四半期以降の決算発表では、収益と資金繰りの動向を注意して見る必要があります。19年3月の予想を実現するには、下半期で50億円ほど営業利益の積み増しが必要です。今後の業績と事業再編に注目です。
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