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中国人のインバウンド消費が大幅に減少する恐れ

 2つ目のポイントは、中国経済の動向です。まずは中国の「貿易収支・通関」を見てください。

(出所:税関総署)

 2017年は4195億ドルとなっていますね。このうち約2758億ドル が対米黒字です。つまり、中国の貿易黒字はほとんど米国から稼いでいる。これが、米中貿易摩擦が過熱することでどれだけ減っていくのかが、大きな注目ポイントになります。

 中国は2018年上半期、経常収支が赤字になりました。経常収支は、貿易収支・サービス収支・所得収支(海外から得た利子や配当など)を合計したもので、海外との総合的な取引状況を示します。これが赤字になったことは、海外から稼げなくなりつつあることを示しています。

 経常赤字となった主な要因は、中国人の海外旅行が増え、サービス収支の中の「旅行収支」が悪化したこと。旅行者が滞在先で支払う宿泊費や交通費が赤字に計上されます。

 中国経済が成長するにつれ、国民の生活は豊かになり、海外旅行熱が高まり、さらに高品質な海外製品に対する需要が伸びました。税制上、輸入するよりも海外で購入した方が安いことが、海外旅行先での爆買いを後押ししました。こうした動きが経常収支の悪化をもたらしたのです。

 これは、日本にとっても無視できる問題ではありません。中国政府がこの先、旅行収支赤字を縮小することや海外での商品購入を抑制すべく動き出す可能性があります。2019年の中国経済は成長が鈍化し、さらには米中摩擦が激しさを増すことで貿易が減速すれば、経常収支の赤字をファイナンスするのに困難をもたらすかもしれないからです。

 以下の要因は、中国の成長を見込んだ海外からの投資を鈍化させるでしょう。中国はかつて2ケタ成長を続けていましたが、2018年7〜9月期は6.5%まで鈍化しました。今年は米中貿易摩擦がさらなる負の影響をもたらします。長期的には一人っ子政策の影響で労働力人口が減少していきます。これも経済成長を鈍化させます。

 すると何が起こるのか。「人民元売り」です。人民元の下落が続き、下手をすれば暴落する可能性も否定できません。中国政府は、こうした状況を看過するわけにはいきません。一時は1ドル=7元近くまで下落した人民元の対ドルレートはここにきて、少し持ち直していますが 、予断は許しません。過剰な人民元安を防ぐため、せめて旅行収支の赤字だけでも縮小して人民元安に歯止めをかけようと対策を打ち出す可能性も考えられます。