
どうやって書き進めるか?
この期に及んで、まだ迷っている。
「法の隙間」というテーマだけは決まっている。内容も、“今回のような”問題は私たちの周りに山ほどあり、ほにゃららほにゃららと書きつづりたい。が、問題が問題だけに、さて、困った。などと、ウダウダ言ってるうちに1時間近くが過ぎてしまった。これ以上の猶予はないので、思うところから書くことにする。
先週、ジャニーズ事務所の創業者、故ジャニー喜多川前社長による所属タレントへの性加害疑惑を巡る問題について、ジャニーズ事務所の藤島ジュリー景子社長が動画を公開した。
“ジャニーズ”は「私」たちの中にいた
テレビなど大手メディアは“速報”で、藤島社長の「心よりおわび申し上げます」という謝罪を報道。これまでの経過を説明し、1988年に最初に実名で被害を公表した元フォーリーブスのメンバーの自伝や99年に週刊文春が大々的に取り上げたこと、これに対し、故ジャニー喜多川前社長とジャニーズ事務所が「名誉毀損に当たる」として訴え裁判になったことなども報じた。ちなみにこの裁判では2003年5月に東京高裁が、「その重要な部分について真実」「真実でない部分であっても相当性がある」として性加害を認定。ジャニーズ側はこれを不服として上告するが、04年に棄却されている。
これに対し識者やジャーナリストを名乗る人たちは、「テレビ局はこの問題を知りながらも触れなかった。それが被害を拡大した」「ジャニーズのファンも知りながら何もしなかった」といった批判を繰り広げた。テレビが悪い。ファンが悪い。ジャニーズに忖度(そんたく)し見て見ぬふりをした、ファンが知らなかったわけない、と。
しかしながら、裁判になった1999年といえば、国民的人気グループSMAPが出演するバラエティー番組「SMAP×SMAP」が20%超の視聴率を記録し、嵐がデビューするなどジャニーズ旋風が吹き荒れた時期だ。さらに、「事実認定」された2003年にはSMAPの『世界に一つだけの花』が爆発的に売れ、ジャニーズ側の上告が棄却された年の翌05年、NHK紅白歌合戦では、出場歌手全員で大合唱している。
ファンだとかファンじゃないとかは関係なく、“ジャニーズ”は「私」たちの中にいた。子供から、おじいちゃん、おばあちゃんまで、皆が知る存在だったはずだ。
確かにテレビ局は性加害を報じなかった。が、社会や、「私」たちの、性加害への関心はどうか? 社会は性加害という問題に向き合ってきただろうか。私も例外ではない。裁判があったことさえ知らなかったし、知ろうともしなかった。恥ずかしいことだと思う。
Powered by リゾーム?