
今回は「求められ続ける人」についてあれこれ考えてみようと思う。
先日、日本経済新聞のスポーツ面に掲載された野球評論家の権藤博さんのコラムは、まるで「今を生きる会社員」へのメッセージのようだった(2023年1月26日付朝刊)。
冒頭は少々衝撃的。なんとプロ野球の世界の新人たちの中に、「プロで長く続けたい」という抱負を語る新人が増えているのだという。
長時間労働と生産性の関係を語る言葉
それに対し権藤さんは、「一般社会でも終身雇用が崩れ、若者が転職しながら出世を目指す時代に、それでは夢がない!」と一刀両断。その上で「あすのことより、きょうのことを必死にやれ」、新人は「後先考えずに目の前のことに取り組むだけだ」と檄(げき)を飛ばし、「あのイチローだって、最初から長くやろうなんて思わなかったはずだ」「大切なのはどの球団にも欲しがられる選手になること」と説いた。
そして、真のプロフェッショナルとは、「ギリギリのところで(ケガをしてしまうような)危険を回避しながら、最善のプレーができること」。それができたのが、結果的に長寿選手となったイチローや鳥谷敬(阪神、ロッテ)らだとつづっている。
権藤さんといえば、中日ドラゴンズに入団した1961年に、投球回数429回1/3という、今も残るプロ野球レコードを持ち、「権藤、権藤、雨、権藤」と呼ばれるなど、プロ野球史上最強の新人だった。むろん私はまだ生まれてない頃の出来事なので、私の中では横浜ベイスターズを38年ぶりの優勝に導いた監督のイメージしかない。
しかし、今回権藤さんのコラムを読み、えらく感動した。こんな言い方は人生の大先輩に失礼かもしれないけど、言葉の裏側にある経験の奥行きの深さというか、厳しい言葉に込められた優しさにグッときた。
私は常々、「目の前の仕事に完全燃焼せよ!」と言い続けてきたので、権藤さんも同じようなことを言っていてなんだかとてもうれしかったし、同時に、ケガをしたら本人もチームも損をするのだから、「ギリギリのところで危険を回避しながら、最善のプレーができることが真のプロフェッショナル」という言葉には、目から鱗(うろこ)が5枚くらい落ちた。
ああ、こういう視点で長時間労働と生産性の関係を語る言葉が、私にはなかったなぁと深く反省したのである。
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