(写真:Shutterstock)
(写真:Shutterstock)

 やはり「月曜日」だった。
 日曜の後半から憂鬱になり、月曜の明け方には「生きていることの苦しみから逃れたい」という衝動に見舞われ、命を絶つ。「ブルーマンデー」と呼ばれる現象が認められることが、厚生労働省が公開した「令和4年版自殺対策白書」で明らかになった。

[画像のクリックで拡大表示]

日本のそれは“失われた30年”突入後

 死に急ぐ人たち=自殺者の数は1998年、一挙に前年から35%も増加し3万人を突破。2012年にやっと3万人を下回り、その後は減少傾向をたどっていたが、新型コロナウイルスの感染が拡大した20年に前年比912人(4.5%)増の2万1081人と大幅に増加。21年は74人(0.4%)減って2万1007人となったものの、年齢別に見ると20代と中高年で大幅に増えていることが分かった。

 20代が前年比90人(3.6%)増、40代が同7人(0.2%)増、50代が同193人(5.6%)増と、特に50代の増加が目立った。人数では「50代」が3618人と最も多く、次いで「40代」(3575人)。男女別では、男性は「40代」(2519人)、女性は「50代」(1126人)が最も多かった。

 近年、若者やコロナ禍で倍増した女性の自殺者問題が度々注目を集めているが、一時期減少傾向に転じていた40代、50代の中高年男性も増えた。しかも、月曜日。そう、男女ともに「月曜日」に最も多く自殺者が発見されていたのである。

 「月曜日の朝、中高年の自殺が増える」という切ないリアルは、早稲田大学と大阪大学の研究グループの論文、「Diurnal variation in suicide timing by age and gender: Evidence from Japan across 41 years」が、2018年に国際精神医学誌「Journal of Affective Disorders」のオンライン版に掲載され、話題となった。

 この論文の“ウリ”は、1974年~2014年の41年間の自殺死亡者87万3268人のデータを用いたことに加え、日本の経済状況が激変した1995年を境に、「バブル崩壊前」(74年~94年)と、「崩壊後」(95年~2014年)に分け、死亡時刻と曜日、性別、年齢別に比較した点にある。

 その結果、1974年の高度成長期からバブル崩壊までには、いわゆる「ブルーマンデー」が認められなかった。日本より早くストレス研究が蓄積されてきた欧米では、70年前後から月曜の朝に、中高年男性の自殺者が増える傾向が報告されてきたのが、日本のそれは“失われた30年”突入後だった。
 40~65歳までの中高年男性の自殺者が、月曜日の「朝4時から7時59分まで」に集中していたのだ。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り4094文字 / 全文5279文字

日経ビジネス電子版有料会員なら

人気コラム、特集…すべての記事が読み放題

ウェビナー日経ビジネスLIVEにも参加し放題

バックナンバー11年分が読み放題

この記事はシリーズ「河合薫の新・社会の輪 上司と部下の力学」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。