一方で、冒頭の男性が抱える「非管理職の40代」の処遇は、深刻な問題である。
厚生労働省の「平成30年賃金構造基本統計調査」によれば、40~44歳までの役職者の割合は23.65%で、45~49歳までの役職者の割合は30.36%。つまり、管理職として働けるポジションは、40代であっても4分の1程度の枠しかない。
50代社員のモチベーションの低さばかりがクローズアップされるが、40代のヒラ社員もそれ以上に手を掛けなきゃならないのに、放置されている。少なくとも私の知る限りでは危機感があるのは現場レベルだけ。会社側はZ世代、有能人材にしか興味がないのだ。
40代をないがしろにし、50代を用無し扱いする
では、そんな状況下で、40代をどう処遇すればいいか?
私が何年にもわたりキャリア研究を続ける中で確信したのは、「教える、任せる、送り続ける」という3つの重要性だ。
1つ目の「教える」とは、彼らが講師となって、後輩や社内外の人たちに教える機会を与えること。
テーマは自由。本人が教えたいことをテーマにさせればいい。
「教えることで自分の仕事の棚卸しにつながった」
「教えることで自分の学びにつながった」
「教えることで自信が付いた」
とするミドル世代は多かった。
2つ目の「任せる」は、「教える機会」を与えたら本人に任せること。上司はついあれこれアドバイスしたくなるが、グッと我慢する。巨人の星の明子姉さんのように、陰から見守ってほしい。ただし、フィードバックがある方がいいので、講義後のアンケート実施などを、最初から指示しておくといいかもしれない。
そして、3つ目が「あなたは大切な人」というメッセージを送り続けることだ。
「キミなら大丈夫だ」「おお、頑張ってるな」「責任は私が取るから思いっきりやってこい」と言い続けてほしい。
え、そんなこと言えないって?
昇進も昇給もさせてあげられないなら、せめて声掛けぐらいはやってほしい。
大切なのは彼らが、「自分のやっている仕事には意味がある」「私がここにいることには意味がある」と思える支援を、一人の「上司」として、人生を少しだけ長く生きてる「人」として関わることだ。
40代をないがしろにし、50代を用無し扱いする会社に、50代の意地を見せてほしい。
会社の仕事としてではなく、人生の仕事として「喘ぐ40代」の傘になってくださいませ。
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