やっと正社員になれたのは35歳の時です。給料はほとんど変わりませんでした。でも、これでやっと落ち着いて先を見据えた働き方ができると、モチベーションは上がりました。何とか成果を出そうと長時間労働に耐え、上司のパワハラにも耐え、踏ん張りました。

 でも、45歳定年説が話題になった時はあぜんとしましたし、気が付けば自分も40代の半ばにさしかかり、肩書が付かないことは99%確定です。

「中期キャリアの危機」に遭遇し、絶望

 私はいわゆる氷河期世代です。いつかは報われる、就職が難しいこともあったね、って若い頃を懐かしむ日がきっと来ると、信じていました。正社員になれば未来が開けると思っていたし、40代になれば肩書が付くと信じていた。でも、もう無理ですよね。

 上の世代は課長代理とか肩書が付いて、部下無し管理職で好き放題やってるのに、私は代理にさえなれなかった。
 結局、私たちは体育会系最後の世代なんです。コロナ禍で働き方も、会社のあり方も変わって、この先どうやって生きていけばいいのか。考えると絶望しかないので、考えないようにしてます」

 ……以上が、冒頭の男性が知りたがった「河合さんがインタビューしている40代は、どんなことを考えているのでしょうか」の答えだ。

 「いつかは、きっと」――。
 これは重い言葉だと思う。

 “体育会系最後の世代”とは、言い得て妙というか、上の世代としては申し訳ないといいますか。「1年2年兵隊、3年平民、4年は神」なんてことを、学生時代によく言っていたけれど、彼はずっとずっと“兵隊”だった。

 やっと「キタ~“新入部員”!」と小躍りしたものの、彼らは「文化系」だった。
 仕事に対する価値観も違うし、会社や上司との付き合い方も違う。下っ端向けの仕事を任せようものなら、「なんか違う」とすぐに会社を辞めてしまうので、全く仕事が楽にならない。賃金も全く上がらないので、生活も楽にならない。

 なのに、会社の“若手信仰”は年々高まりを見せ、コロナ禍で最高潮に達した。
 もはや“若手”ではない彼らは、時代にも会社にも、上にも下にも肩透かしを食らいまくった。“平民”や”神“が40代で手にした様々な武器=リソースを、得るチャンスもないままに、「中期キャリアの危機」に遭遇し、絶望していたのである。

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