(写真:Shutterstock)
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 これほどまでに、卑劣で狡猾(こうかつ)で横暴な“事件”はない。
 複数の自衛官による元女性自衛官への“セクハラ(性暴力)事件”だ。

 この問題は4カ月ほど前の6月29日に投稿されたユーチューブ動画をきっかけに、世間に知られることになった。ここで文字にするのもはばかられるような、ひどい性暴力を1回限りではなく日常的に、個人ではなく集団で、同僚の見ている前で受け続けた。

「セクハラ大国」と海外にやゆされる日本

 一体いつまで女性は、「性の対象」として扱われなきゃいけないんだ?
 なぜ、被害者なのに、「夢」を諦め、退職をしなきゃいけないんだ?

 まだ22歳。まだ22歳ですよ。本当にむごい、としか言いようがない。

 4年前の2018年4月。財務省の福田淳一事務次官(当時)による“セクハラ事件”で、「セクハラ罪っていう罪はない」「(福田氏)本人が否定している以上は裁判になったり、話し合いになったりということになる。ここから先はご本人の話だ」と、上司である麻生太郎財務大臣(当時)が発言して問題になったが、あの頃と“社会の認識”は変わっていない。

 セクハラはジェンダーヒエラルキー、すなわち性差別が生む暴力であり、社会構造の問題である。

 今回の男性自衛隊員の卑劣な行動、自衛隊側の対応はそれを象徴するものだった。

 陸上自衛隊トップの吉田圭秀陸上幕僚長は、10月20日の記者会見で、「ハラスメントを許さない組織文化をしっかり根付かせていきたい」と強調したが、働く女性の権利や尊厳の実現と連動することがない限り、セクハラはなくならない問題である。

 ……被害に遭った元自衛官の女性のツイッターには、目を覆いたくなるような卑劣なコメントが多数書き込まれていたのですよ。本当にひどいものだし、自衛隊の対応の遅さもあまりにも……ひどかった。

 そこで今回は、「セクハラ大国」と海外にやゆされる日本の問題をテーマに、あれこれ考えてみる。

 既にこの問題は多くのメディアで取り上げられているが、10月17日にセクハラに関与した男性隊員のうち4人が女性に会って、直接謝罪に至るまでの流れを振り返っておく。

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