(写真:Shutterstock)
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 「“捨てられる50歳”とかいいますけど、私たちはずっと捨てられてきた。景気が悪いからって会社が勝手に採用を控えたのに、まるで私たちに能力がなかったみたいないわれ方をされてきた。結局、私たちは何者にもなれない。40歳を過ぎても肩書も付かない。先のことを考えると気分が悪くなるので考えないようにしていますけど、病気にでもなったら全て終わりですね」

 こう嘆くのは、40代の男性会社員。いわゆる“就職氷河期世代”(1990年代後半から2000年代前半に就職活動をした人)だ。

氷河期世代が参加したのか、分からない

 改めて言うまでもなく、氷河期世代はたまたま就職時の時代が悪かっただけで、まるで泥沼に入り込んだように「不遇」につきまとわれた世代だ。

 ずーっとずーっと「なんとかせいよ!」と、専門家や研究者たちが指摘してきたのに、国の動きはとんでもなく鈍かった。

 やっと重い腰を上げたのは、5年前。しかし、どれもこれも全く問題解決に至っていない。

 17年度にスタートした「就職氷河期世代の人たちを正社員として雇った企業に対する助成制度」(特定求職者雇用開発助成金・就職氷河期世代安定雇用実現コース)の利用率はわずか「1割未満」。1割、そう、1割にさえ届いていない。

 約5億3000万円の予算のうち、17年度中に利用されたのは、たったの765万円(27件)。18年度は約10億7000万円に予算を倍増したにもかかわらず、同年12月末までに約1億2800万円(453件)しか使われていなかった(日本総研19年5月29日付「Viewpoint『就職氷河期世代への支援の在り方を考える』」)。

 また、19年に政府は“氷河期世代に能力開発を!”という失礼な掛け声の下、氷河期世代の正社員を3年間(20~22年度)で30万人増やす計画を打ち出した。

 ところが、最終年度となる現段階で、目標の10分の1にすぎない、たった3万人しか正社員が増えていないことが分かった。しかも、656億円の予算のうち、各省庁が実施した約60事業の中には、氷河期世代の人が本当に参加したのかどうか、分からない事業があったという(毎日新聞22年7月8日付「氷河期支援、効果に疑問 正社員増、目標の10%」)。

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