その前に、日本の現状を簡単に復習しておく。

 以下のグラフ(全国労働組合総連合(全労連)が作成した「実質賃金指数の推移の国際比較(1997年=100)」)を見れば、日本の異常さが一目瞭然。日本だけ実質賃金が1990年代から下がり続け、97年を100とした場合、日本だけがマイナスを爆走中だ。

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現場を疲弊させた要因とは

 OECDの調査によると、日本の平均賃金はOECD平均を下回り、韓国よりも低い(資料、OECDホームページ「平均賃金」のグラフ)。

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 また、日本の製造業の労働生産性は90年代は世界でトップだったが、その後は大きく後退している(資料、日本生産性本部「労働生産性の国際比較2020 概要」)。

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 むろん、労働生産性の国際比較はその算出方法に、結果が左右されるとの指摘もある。しかし、日本の生産性が伸び悩んでいることは紛れもない事実だし、今の日本には「コレじゃなきゃダメ!」と人々を魅了する独自性もない。ロボットやIoT、デジタル技術を活用して、「付加価値を獲得せよ!」という意見は多いし、それを批判する気はない。しかし、付加価値は常に現場で生まれ、その現場をつくるのは「人」だ。日本は良い製品・商品を生む現場を、大企業は下請けを、要するに「人」を疲弊させたのだ。

 では、「現場を疲弊させた」具体的な要因は何か?

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