とまぁ、しょっぱなから批判ばかりになってしまったのだが、白書にはもっと多くの人に知っていただきたい、名もなき英雄たちの汗と、今の日本に最も欠けている「共助」のヒントが書かれていた。“ここ”。そう、“ここ”をもっと広めることこそ、リアルな「いきがい対策」であろう。

 そこで今回は、75歳以上の高齢者の現実を高齢社会白書から読み解き、「私」たちにできることを、あれこれ考えてみようと思う。ただし、生きがいとの関連は65歳以上の結果しか出ていないで、その旨ご承知ください。

外出しないではなく、できない?

 では早速、生きがいに関する調査結果から、一言コメントを加えて紹介する(以下の項目は、高齢社会白書の結果から抜粋・要約)。

  • <生きがい(喜びや楽しみを感じる程度)>
  • ・男女ともに「感じている(十分・多少)」の割合は65歳以上全体では72%だが、75歳以上だと65%程度に低下。
  • ・「感じてない(あまり・まったく)」は男性の方が多く24.6%(全体21.3%)、女性は22.7%(同19.6%)。

→内閣府が60歳以上を対象に、1994~2014年まで5年ごとに実施した調査(「高齢者の日常生活に関する意識調査」)のうち、5回目となる14年調査では、生きがいを「感じている」人は65.5%(09年より13.1ポイント減)だった。 さて、これをどう解釈するか? (参考資料:2014年、内閣府「高齢者の日常生活に関する意識調査」結果(概要)

  • 〈近所の人との付き合い方〉
  • ・男女ともに「会えば挨拶する」が最も多く8割。「外でちょっと立ち話」「物をあげたり・もらったり」は5割、「相談したりされたり」は2割強だった。
  • ・「生きがいを感じている人」が最も多かったのは、「趣味をともにする付き合いがある」の人たちで、次いで「お茶や食事を一緒にする」、「外でちょっと立ち話をする」だった。

→「外でちょっと立ち話をする」だけでも楽しかったと思ってくれるのなら、私たちにもできる! マンションの中でも、近所で会ったときでも、スーパーの中で顔見知りのおじいちゃん・おばあちゃんに会ったら、挨拶プラスちょっとした会話をすればいい。

  • 〈親しくしてる友人・仲間の有無〉
  • ・友人・仲間を「持っている(たくさん・普通・少し)」人の約8割が、生きがいを「感じている」と答えたのに対し、「持っていない」人の約6割が生きがいを感じていなかった。

→60代後半以上の人は「広い関わりの欠如」が健康悪化につながるとの先行研究あり(海外の研究)。

  • 〈外出の頻度〉
  • ・「ほとんど外出しない」人の約6割が、生きがいを感じていなかった。

→外出しないではなく、できない状態の可能性が高いのでは?

  • 〈情報機器の利用内容〉
  • ・男性のほうが女性より利用している人が多く、インターネット(男性17.7%、女性5.8%)、SNS(男性7.6%、女性5.6%)、メール(男性12.4%、女性3.8%)。
  • ・メールを利用している人の9割が生きがいを感じていた。一方、情報機器を使わない人でも、52%が生きがいを感じ、40%は感じていなかった。

→情報機器を使ったほうがいいのかもしれないけど、メールのやり取りができる人がいることが前提。無理して使わなくてもいいのでは?

  • 〈収入を伴う仕事をしているかどうか〉
  • ・「収入を伴う仕事をしていない」人は、男性72.6%、女性88.5%。
  • ・「収入を伴う仕事をしていない」人の68%が生きがいを感じていた。

→収入を伴う仕事をしている人が、そもそも少ないので、参考にならない。

  • 〈社会活動への参加〉
  • ・「1年間に活動・参加した」人は、男性56.1%、女性46.2%。
  • ・「活動・参加していない」人は、男性35.8%、女性39.4%。
  • ・「1年間に活動・参加した」人の85%が生きがいを感じていた。
  • ・「活動・参加してない」人の62%が生きがいを感じ、33%が感じていなかった。

→健康・スポーツや趣味、地域行事などへは参加した方がいい。

  • 〈現在の健康状態〉
  • ・「健康状態」が良い人ほど生きがいを感じていた。
  • ・「健康状態」が良いと回答した人の91%が生きがいを感じていたのに対し、良くない人の56%が生きがいを感じていなかった(生きがいを感じている人は33%)。

→主観的健康は寿命にも影響するほど、プライオリティの高い要因。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り2639文字 / 全文5847文字

【春割/2カ月無料】お申し込みで

人気コラム、特集記事…すべて読み放題

ウェビナー・音声コンテンツを視聴可能

バックナンバー11年分が読み放題

この記事はシリーズ「河合薫の新・社会の輪 上司と部下の力学」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。