実際、改めて周りを見渡してみると、仕事でご一緒する非正規の男性はほぼ、独身である。

 例えば、雑誌のインタビューの場合、出版社の正社員から依頼がきて、インタビュー当日に「ライターの〇〇です」などと自己紹介を受けるが、彼ら・彼女らの多くは、フリーランスの個人事業主で、正規雇用の人はほとんどいない。

 インタビューのテーマは大抵、ミドルの働き方や生き方に関する内容なので、話題は自然に親の介護問題や、自分たちの将来不安などに流れる。すると、彼らが未婚者であることが分かる。親と同居していたり、在宅で介護していたり。めったに話さない個人的な問題も、親の介護問題や老後問題が絡むと自然と出る。

男性非正規、多くは「やむなく非正規」

 数年前に「気がつけば周りは非正規だらけだ」と思ったけど、今はそれに「独身」が加わった。しかも、その対象は男性。女性の非正規も多いが、大抵結婚している。そういった意味でも、件の数字は、私の生活世界ではリアリティー満載なのだ。

 むろん、昭和の高度成長期は「結婚して一人前」なんて言説がまかり通った時代だし、「結婚できないじゃなくて、結婚しない人が増えてるだけでしょ?」だの、「ライフスタイルの変化でしょ?」だの、「別に結婚がすべてじゃないのだから、個人の自由」という意見もあるだろう。しかし、今の独身はかつての“独身貴族”のような存在ではない。

 だって、彼らは非正規。企業がコスト削減のために増やした非正規雇用だ。金銭的にも、時間的にも、精神的にも余裕がない非正規という雇用形態が招いた、「個人の選択」と言えよう。ご覧の通り、25歳~34歳の男性非正規の割合が増加傾向にあることや、男性非正規の多くが「やむなく非正規」であることを鑑みれば、「ひとそれぞれだし~」で終わらせる問題ではないことも明白である。

出所:男女共同参画局「男女共同参画白書 平成26年版」
出所:男女共同参画局「男女共同参画白書 平成26年版」
[画像のクリックで拡大表示]
出所:男女共同参画局「男女共同参画白書 令和3年版」
出所:男女共同参画局「男女共同参画白書 令和3年版」
[画像のクリックで拡大表示]

 賃金カーブも非正規と正社員では大きく異なる。

出所:厚生労働省「令和2年版 厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える-」
出所:厚生労働省「令和2年版 厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える-」

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り3405文字 / 全文5263文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

特集、人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

ウェビナー【日経ビジネスLIVE】にも参加し放題

日経ビジネス最新号、10年分のバックナンバーが読み放題

この記事はシリーズ「河合薫の新・社会の輪 上司と部下の力学」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。