一方で1996年、文部科学省の「ポスドク1万人計画」で、大学院博士課程の定数を3倍の規模に拡大したものの、1万8000人もの“さまようポスドク就職浪人”が量産された。専門性を生かす場もなければ、稼ぐこともできない。大学も企業も博士を生かす場所にならなかった。
 その結果、進んだのが、日本の低学歴化だ。

研究者は世界3位だが、論文数では4位

 1980年以降、増加傾向にあった博士号取得者は、2000年代に伸びが鈍化し、06年以降は減少に転じ、主要国の中で日本だけが減少している。

出所:文部科学省科学技術・学術政策研究所(NISTEP)「科学技術指標2021」
出所:文部科学省科学技術・学術政策研究所(NISTEP)「科学技術指標2021」

 日本は先進国の中で唯一、低学歴化が進んでいる「博士後進国」に成り下がった。この問題は、本コラムでも度々取り上げてきた。

 ところが、である。
 実は件の「科学技術指標2021」には、興味深い指標がある。主要国での「研究者の数比較」だ。国よって研究者の定義に若干の違いはあるが、経済協力開発機構(OECD)では「研究者」を「新しい知識の着想または創造に従事する専門家。研究を実施し、概念、理論、モデル、技術、測定、ソフトウエア又は操作工程の改善もしくは開発を行う」と定義。国際的にはFull-Time Equivalents=FTE(フルタイム当量)を、研究者数の測定値として用いている。

出所:文部科学省科学技術・学術政策研究所(NISTEP)「科学技術指標2021」
出所:文部科学省科学技術・学術政策研究所(NISTEP)「科学技術指標2021」
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 で、その研究者数の推移を主要国で比べたのが、上記の図だ。
 日本の研究者は68万人で、中国の211万人、米国の156万人に次ぐ世界第3位。
 なのに総論文数は英国、ドイツより少ない4位、被引用回数が各年各分野で上位10%に入る「上位10%論文」は英国、ドイツ、イタリア、フランスより少なく、10位だ。シェア数で見ると、総論文数は4.1%、上位10%論文はたったの2.3%。しかも、博士号取得者は減っているのに、研究者数は微増を続けている。

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