(写真:Shutterstock)
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 今度こそ“科学技術立国”、復活の手立てとなるのだろうか。

 世界最高水準の研究成果が見込まれる大学を支援するために、10兆円規模の大学ファンド(基金)を設ける新しい法律「国際卓越研究大学法」が国会で成立し、いよいよ始動することになった。これは科学技術を「成長戦略の柱」とする岸田文雄政権の看板政策の一つで、世界でも珍しい、国が元手を貸す「官製ファンド」だ。うまくいけば、世界から評価されること間違いなし……らしい。

稼げる大学は優遇する

 この法律は、「国際的に卓越した研究の展開および経済社会に変化をもたらす研究成果の活用が相当程度見込まれる大学」を、文部科学省と政府の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)で検討し、「国際卓越研究大学」として認定する。

 CSTIは岸田首相が議長を務め、6人の閣僚、および大企業の会長や役員、大学の教授など、計14人のメンバーで構成。認定には、「産学連携や寄付などで、年3%の事業成長」「重要事項を決定するための、学外者が多数を占める合議体の設置」などの条件があり、大学ファンドの運用は科学技術振興機構が行い、利益を「国際卓越研究大学」に認定された大学に2024年度から分配する予定だ。

 日本の科学技術力の衰退ぶりは著しく、復活の“芽”も見えない。
 文部科学省が所管する科学技術・学術政策研究所(NISTEP)がまとめた報告書「科学技術指標2021」によれば、日本は1980年代から2000年代初頭までは論文数のシェアを伸ばし、英国やドイツを抜かし、一時は世界第2位だった。しかし、18年時点で、1位中国、2位米国、3位ドイツに次ぐ、4位に転落。注目度の高い論文数(Top10%補正論文数)は10位(前年9位)、Top1%補正論文数では12位に転落している。

出所:文部科学省科学技術・学術政策研究所(NISTEP)「科学技術指標2021」
出所:文部科学省科学技術・学術政策研究所(NISTEP)「科学技術指標2021」
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 また、日本の研究者が発表した論文は、米クラリベイト・アナリティクスが提供するオンライン学術データベースである「Web of Science」のデータによると、05年に比べて15年には約600件減少。減少幅は1%未満だが、世界の論文に占める日本のシェアは8.4%から5.2%に低下している。世界トップ級の研究成果を集約しているデータベースである「Nature Index」のデータでも、12年から16年にかけて、日本の貢献度は19.6%減少している(Nature Index 2017 Japan  “Striving for a research renaissance”)。

 そこで、これまでにない大規模な支援を行うことで、大学の研究力を強化し、世界と戦える大学をつくろう! と、国が官製ファンドという“切り札“を切った。
 つまり、これは選択と集中であり、稼げる大学には大枚をはたくが、それ以外は……というのが本音なのだろう。

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