(写真:Shutterstock)
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 現場から一斉にブーイングが出ていた“案件”が、ついに動き出した。

 介護施設における人員配置の問題である。入所者「3人に対し、少なくとも1人」の介護職員を配置する、というこれまでの基準を変更し、「4人に対し1人」でも施設を運営できるように規制を緩和する方針だという(日本経済新聞2022年5月26日付朝刊「薬剤師、看護の仕事も 医療の非効率を改善」)。

ある意味では、正論

 ひょっとすると、この規制緩和の“危うさ”が、今ひとつピンとこない人がいるかもしれないので、この規制緩和に伴う騒動が「動き出す」までの流れをおさらいしておく。

 騒動が大きくなるきっかけの1つになったのは、21年12月21日付の日本経済新聞朝刊に掲載された、「1人で4人介護可能に 政府、生産性向上へ規制緩和検討」というタイトルの記事だった(以下、記事の抜粋要約)。

 政府は介護の人員規制の緩和を検討する。介護施設の入所者3人につき、少なくとも1人の職員を配置する現行の基準を見直し、1人で4人に対応できるようにする案を軸に調整する。(中略)センサーで患者らの状況を確認したり、ロボットで作業負荷を抑えたりする技術開発が進んでいる。現行の配置基準があるため、ITで効率化が可能でも投資するインセンティブが弱かった。

 この規制緩和案に対して、介護団体や老人ホームの施設長さん、介護士さんたちから批判が殺到。
 「現場の負担をこれ以上増やしてどうする?」
 「こんなことしたら、辞める人がますます増える」
 「緊急時に対応できない」
 「すでにITを活用しているが、かえって人手がかかることもある」
 「入所者さんのQOL(Quality of Life)を担保できなくなる」
 などなど、“人間の老い”と日常的に関わっている人たちに波紋が広がったのだ。

 その後、政府は実証事業を行うとして事業者を選定。4月スタートを見込むと報じられた。

 で、今回。つまり、冒頭の5月26日朝刊によると、政府の規制改革推進会議は、医療・介護分野の答申案に「介護施設の人員配置基準を緩和する方針も盛り込んだ」。しかし、医療・介護分野は、「業界団体が制度の見直しに反発することが多く、『岩盤規制』が温存されがちだ。改革案を実行に移すには、政府の主導力が試される」と結ばれている。

 岩盤規制温存という言葉には少々違和感があるが、……政府の方針は、ある意味では正論である。

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