(写真:Shutterstock)
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 「ヤボなことを聞いてすみません。あの、私は幸せなんでしょうか?」

 インタビューの最後、ためらいがちに男性は言った。
 大手企業に勤める50代前半の彼は、同世代の多くがそうであるように、セカンドキャリア、親の介護問題、これからの生活などなど、「これでもか!」ってくらいの難題に直面し、何が正解なのか分からなくなってしまったという。

心身ともに疲れ切った

 新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大で日常が激変した2020年6月、コラム「『俺の時代は終わった』 新型コロナで揺れる管理職たち」の中で、

 「いずれにせよ、この2カ月の変化のスピードは、生身の人間が耐えることができる限界を完全に超えている。わけが分からなくなって当たり前だ。そして、これ以上はこの速さについていくのは無理だ!となったとき、人は止まる。運転してるときと同じだ。いったんブレーキを踏んで、側道に寄る。自分が壊れないために、だ。で、ものすごいスピードで通り過ぎていく車を、ただただ見つめ、『もう、いいかな』と戦線離脱するのだ」

 と書いた。

 その2カ月後の8月、コラム「『うちの会社もやばい』コロナ不安で摩耗する中高年の心」では、前述のパートを引用し、

 「今は、このときの『完全なる限界』をはるかに超えているといっても過言ではない。(中略)
 40~50代は、ただでさえ、内的にも外的にもネガティブな経験が増え、人生の時間的展望も微妙に変化する『人生の転換期』だ。そこに『新型コロナ』という未知のウイルスが社会をかき乱し、カネ、生活、仕事の全ての歯車が狂い始めた。今まで築いてきた自分の成功体験が打ち砕かれ、何をどうすればいいのか、分からなくなる」

 と、惑う中高年の心理を書いた上で、「前に進もう!」とエールを送った。私自身、コロナ禍での急激な環境変化に惑う、中高年の一人として。

 あれから2年弱。多くの人たちが、「このままでは終わりたくない!」という思いを胸に、前を向いて歩いている。冒頭の男性もその一人だ。

 しかし、彼は「心身ともに疲れ切った」と。前に進もうとすればするほど、一時期は見えた「光」にモヤがかかり、「果たして自分のやっていること、考え方で大丈夫なのか?」と、自分を信じる気持ちが揺らぐのだという。

 「私は幸せなんでしょうか?」と他人に聞くのは、“ヤボな問い”だと私も思う。しかし、まるで暗闇の回廊をさまよっているようで、自分の行いに確信が持てなくなった。「あなたは大丈夫!」と言ってほしかった、だけなのだろう。

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