ところが、2022年のランキングでは、日本企業は1社。トヨタ自動車たった1社だけ。一方、トップは米国の34社で、中国5社、フランスとスイスが2社で続く。

 日本が世界を席巻していた時代を知らない若者たちからは、「日本って、経済大国だったんですか?」「え? 日本って先進国なの?」なんて声も聞こえてくる。

国は報いてくれない

 このランキングから漏れた英国やドイツでも、米国以上に賃金が上昇しているのに、日本だけが「人に報いる」ことを怠ってきた。この違いを、経営者たちはどう説明するのだろうか。

 しかも、かつては「同志」だった大企業と中小企業の関係は、「使う人と使われる人」になり下がった。
 「何? 無理? だったら、他に頼むからいいよ」と、都合よく使われる下請けが生き残るには従業員の賃金を減らすしかないのだ。

 「それ、グローバル化だ!」「やれ、グローバル人材だ!」といった言葉が、毎日のようにメディアに飛び交っていたのに、日本企業はいつまでたっても売り上げを伸ばせなかった。付加価値を生むのは“現場”なのに、現場に金を回すことなく、まるで機械の部品のように酷使し、企業が収益構造を改善するために実施する事業再構築=リストラクチャリングを、“リストラ=首切り”と勘違いし、雇用不安を高め、消費者の購買力の低下を招く元凶となってしまったのだ。

 しかも、「あるところにはある」という大いなる理不尽も存在する。

 中間層の貧困化が進む一方で、日本国内の富裕層と超富裕層の割合は、「アベノミクス」が始まった頃の2013年以降、一貫して増加し続け、富裕層と超富裕層は2019年で132.7万世帯。05年以降で最も多かった2017年には合計126.7万世帯と過去のピークから6.0万世帯も増えているのだ(野村総合研究所 2020年12月21日付「野村総合研究所、日本の富裕層は133万世帯、純金融資産総額は333兆円と推計」)。

 一般ピーポーは、一体どこまで譲歩すればいいのか?
 “人”にどう報いるか? は、その国の“人”に対する価値観を示すものだ。人は生きるため、幸せになるために働いている。なのに、まったく「国、企業」は報いてくれないのだ。

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