親たちの賃金が上がらないと、子供たちも困窮する。
1990年代には全学生の2割程度だった奨学金利用の割合は、親の収入低下と入学金や授業料の高額化により、2010年には5割を突破した。しかも、給付型の奨学金を利用できるのは、年収380万円程度(4人家族の場合)とされているので、生活が苦しくても条件にギリギリ当てはまらず、貸与型しか使うことができない学生は多い。
ツケを払うのは働く人たち
その結果、大学卒業と同時に「借金地獄」に陥る学生が少なくない。
日本学生支援機構が2020年2月に実施した調査(令和元年度奨学金の返還者に関する属性調査)によると、支払いを遅延した人(遅延者)のうち正社員が40.7%を占めており、遅延者の69.7%は「年収300万円以下」だった。
「金がなければ、大学など行かなきゃいい」という人たちもいるけど、高卒と大卒とでは、生涯賃金も異なる。生涯賃金は高校卒が2億6000万円なのに対し、大学卒では3億3000万円(労働政策研究・研修機構 生涯賃金など生涯に関する指標|『ユースフル労働統計:労働統計加工指標集 2021』)。「できることなら大学に行かせてやりたい」というのも親心だろう。
この25年間で賃金が上がらないどころか、下がっているという現実は、「個人」の問題ではなく、払う方、すなわち会社側の問題である。なのに、「賃金が下がる→人生設計が狂う→子の教育費が負担になる→子の負担になる」という、世代を超えた貧困の連鎖が引き起こされている。
40代50代は「もらいすぎ~」だの「会社のコストを圧迫してる~」だのと、常に批判の的となり、「日本の賃金が上がらないのは、雇用維持にコストがかかるからだ」と、あたかも働き手を守っているかのように言う“識者”がいるけど、ちょっと待て! 逆だ。
“経営の怠慢“のツケを、働く人たちが払わされているのだ。
1990年代初頭までは、世界のどこの都市に行っても、日本の企業の看板や広告が至るところにあった。1989年の世界時価総額ランキングで、上位50社のうち日本企業は32社がランクインし、堂々のトップ。2位の米国14社の倍。英国は3社、ドイツは1社だった。
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