日本の賃金が低いという問題は、何年も前からメディアで繰り返し報じられているけど、日本の中間層の没落は「私」たちが考える以上に深刻である。
 男性の生涯未婚率が、1985年の3.9%から2020年には25.7%へ6.5倍に増えていること(2020年の国勢調査)がちょっと前に話題になったが、年収300万円で少子化解消など夢のまた夢。40代になると親の介護問題も出てくるというのに、その金をどうやって工面して親を支えろというのだろうか。

 つい先日も、テレビの画面に目を疑うような「数字」が映し出されていた。
 NHKの朝の情報番組でのミニ特集にVTR出演していた50歳男性の“給与明細”である。

野草を食べる女子大生

 「20年前」というテロップが入った明細書には「148,500」と印字され、「現在」は「168,000」だった。つまり、増えたのは2万円。20年間で、基本給がたったの2万円しか増えていない現実を、“見える化”した映像のインパクトは、はんぱなかった。

 「ここまできつい状態になるとは思っていなかった」と肩を落とす男性は、正社員で雇用されている。看護師の奥さんと共働きで、世帯年収は700万円余り。月々の手取りは、夫婦合わせて40万円。住宅ローンもあるので、貯金をする余裕はない。

 しかも、お子さんがこの春から大学に進学するため、学費は4年間で400万円ほどになるという。高校生のお子さんもいて「きつい未来が待っている」と男性は肩を落とした。
 生活を切り詰めても学費分は出ないため、学費ローンを組むことを余儀なくされたという。

 新型コロナウイルス感染拡大が本格化した2年前、学生の貧困問題を報道番組が毎日のように取り上げていたのを覚えているだろうか。

 「こうやってしょうゆ漬けにすると、長持ちするんで」と、生活費を節約するために、その辺に生えていた野草を採って食べていると、国立大学に通う女子大生が話していたのは衝撃的だった。

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