(写真:Shutterstock)
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 ちょっと前まで、女性たちが密室でしか話すことのできなかった話題が、新聞やテレビで大々的に取り上げられるようになった。

 その一つが「生理」。そして、「更年期障害」だ。

 どちらも女性の問題であって、女性だけの問題ではない。特に、更年期障害は男性にも認められる症状である。1939年に米国で初めて「男性の更年期障害」が報告され、その後はLOH症候群(加齢性腺機能低下症)という名称で呼ばれている。

法案はあえなく廃案

 そんな中、「更年期障害の問題に、政治が動き出した」というニュースが飛び交った。

 3月22日、自由民主党の「女性の生涯の健康に関する小委員会」の会合が行われ、更年期障害に対応するための休暇制度を導入する企業への支援や、企業内研修の推進などが、中間提言案に盛り込まれたという。

 更年期障害への理解不足から、解雇されたり、離職を余儀なくされたりするケースが相次いで報告され、更年期を理由に嘲笑されたりする“更年期ハラスメント”なるものも存在する。育児には支援制度があるが、更年期障害は「個人の問題」として片づけられている。私がインタビューした中には、イライラや頭痛、落ち込みなどの症状を抱えながら働いていた女性が部下を怒鳴ってしまい、「ハラスメント認定」されたケースもあった。

 思い起こせば、今から8年前の2014年にも、女性特有のカラダの事情への意識の高まりを思わせる政治の動きがあった。女性ホルモンの動態による健康状態の変化の視点を取り入れた、「女性の健康の包括的支援に関する法律案」が提出されたのだ。私の記憶に間違いがなければ、高市早苗さんが更年期障害の症状に悩まされ、発案したという。

 しかし、この法案は一度も審議されることなく廃案になった。

 そこで今回は、「更年期ロス」について、あれこれ考えてみる。もちろん女性だけでなく、男性についても。

 更年期ロスとは、ほてり、のぼせなどの症状が出るホットフラッシュ、うつ傾向、物忘れ、情緒不安定などの更年期症状によって、仕事に何らかのマイナスの影響があった状態を意味している。海外で実施された調査では、ワークモチベーションの低下、生産性の低下、人間関係の悪化、職位の降格、離職意向の高まりなどが報告されている。

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