「親の面倒を見るのは子の役目とか、いい娘とか演じなくていい」
 というアドバイスが、「私」をおもんぱかってくれているのだと、頭では理解しても、心がついていかない。

介護休業が取れない

 そもそも老いた親との関わりでは、不安、恐れ、悲しみというネガティブな感情だけでなく、喜びや穏やかさ、希望などのポジティブな感情が沸き立つことだってあり、実に複雑な親への思いをコントロールするのは極めて難しいのである。

 ……かくいう私も「親の変化」に日々直面しているので、ついつい「子の心情」を長々と書いてしまったが、過去1年間に「介護・看護のために」前の職を離れた人の数は約9.9万人で、その8割が女性だ(男性2万4000人、女性7万5000人)。介護離職は2010年代になっておよそ2倍に増え、中でも正社員の離職者が増え続けている。

 つまり、育児と仕事の両立が難しかった時代の女性たちが、今度は介護と仕事を両立できず、辞めることを余儀なくされているのである。

 一方で、働きながら介護をしている人は約346万人。介護をしている人の男女別の有業率は、男性は65.3%、女性は49.3%。いわゆる「ビジネスケアラー(働きながら介護している人)」は、圧倒的に男性が多い。

 年齢別に見ると、女性では最も多いのが「40~49歳」の68.2%だったのに対し、 男性は「55~59 歳」が87.8%と最も高く、次いで「40~49歳」 (87.4%)、「50~54歳」(87.0%)だ(総務省「平成29年就業構造基本調査」より)。

 政府は2015年に「介護離職ゼロ」を目標に掲げ、93日を上限とする介護休業制度を整え、体力のある企業も介護休業制度を1年ないし2年に延長するなど、介護者を支援するとした。

 しかし、依然として介護休業(休暇)を取得している人は少なく、2017年10月時点での介護休業取得率は、全体で1.2%。たったの1.2%だ。介護休業制度以外の制度(例えば短時間勤務制度など)利用を含めても8.6%しかない。

 そんな中、ハウス食品グループ本社が2021年9月から、全社員に介護研修を実施していることを日本経済新聞が報じた(1月28日付朝刊)。

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